こんにちは、シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。

靴ずれって最悪です。でも、令和の時代では簡単に解決できるんです。前提としてフィットした靴を履くのは当然ですが、事実として靴単体だけではなかなか解決しません。合わせ技が有効です。1)ソックス、2)靴ずれを起こさないスニーカー、3)インソール、のどれかを変えるだけで、ほぼ瞬時に靴ずれの悩みからは解放されます。順に解説しましょう。

五本指だけが正解じゃない。「滑り止めソックス」という最強の選択肢

靴と足のフィット感で一番見落としているポイントがソックスです。仕事で「足と靴の相談業」をやってますが、10年以上靴ずれが治らない、というかたの足元を見るとたいていソックスがいつもたるんでいます。まさにそれが原因だった、みたいに笑えない実話も多々あります。靴とインソール、靴とソックスの組み合わせは靴ずれを起こさないために本当に大事なのです。

足にいい健康志向のソックスとえいば、五本指といったイメージが定着していますが、個人的な推しは「滑り止めつきソックス」。
主に陸上競技やサッカー・野球用にスポーツ専門店でひっそり販売されています。

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ミズノの陸上競技用ソックス、1980円。学生時代に筆者もお世話になりましたが、すべり止めがあるのとないのとでは天と地ほどちがいます。たとえば、軍手。普通の軍手と、すべり止めがついた軍手とではどちらが重いものを安全に運べるかは誰にでもわかります。靴の中で足が滑っていては、どんなにサイズ、幅、相性がよくても、100%靴ずれを起こします。履きづらい五本指にこだわる必要はありません。

スニーカーでも革靴でも、直接足がふれる中敷きは意外にすべります。すべらないと足がスルッと入らないのでそもそも売れない、というメーカー側の事情もありますが、歩いていて指が当たる、足の裏の皮がむけるといったトラブルはシンプルに摩擦が原因です。ソックス一発で解消するので、使わない手はありません。

ビジネスにショート丈は使えないなら…

靴ずれとサヨナラ。「滑り止めソックス」という最強の選択肢と、ナイキ「エアリフト」の驚きの効果
タビオBASEBALL 足袋ロングソックス、2640円。写真は公式HPより
ビジネスにショート丈は使えない、という方なら、野球用を使いましょう。老舗の「タビオ・BASEBALL 足袋ロングソックス」、2640円。

脱ぎさえしなければ野球用とは誰も気づかないでしょう。
裏面には滑り止めが一面に貼られていて、意外にも通気性がよく、なんせガチンコの野球用なのでとにかく持ちがいい。甲の皮膚が一番薄い部分もしっかりとクッションで補強されています。実体験として私には娘がいますが、中・高校時代は学校指定の黒か紺のハイソックスでした。しかし半年と持たずに指に穴が開くんです。そこで学校には内緒で野球用のソックスを履かせたところ、学校に一度もバレることなく、3年間余裕で通学していました。スポーツ用のソックスは悪いところがありません。選手の動きを考えて作られているので、着圧、耐久性、通気性、すべり止めのすべてにおいて優秀なのです。スポーツ以外でも使わないのは本当にもったいない。靴へのフィット感も段違いです。

カカトの靴ずれへさよならを。「エアリフト」がすべてを解決

靴ずれとサヨナラ。「滑り止めソックス」という最強の選択肢と、ナイキ「エアリフト」の驚きの効果
ナイキの超ロングセラー「エアリフトブリーズ」、1万2100円。写真は公式HPより
かたい革靴ならいざ知らず、柔らかいスニーカーですらカカトに靴ずれをくりかえし、絶望されている方なら、サンダル代わりから本格的なウォーキングにまで使えるこちらをお試しください。ナイキの超ロングセラー・「エアリフトブリーズ」、12100円。


見ての通り足袋です。ところが指の股が分かれていることで通常のスニーカーよりはるかに踏ん張りが効き、甲もマジックテープに伸縮するゴムバンドでへたな紐靴よりフィットします。指の股は意外にも超ソフトで、まったく痛くありません。ワラジに極めて近いつくりなので、甲の高さ、低さ、幅が広い、せまいがほぼ関係ないのです。脱着も一瞬なのでサンダル代わりにもなり、また旅行で使う中毒者が続出。「靴ずれを起こさない靴」としても有名です。それもそのはず、このモデルは本来ガチンコのフルマラソン用シューズとして1996年に販売されたものだからです。フルマラソンでタイムを競う時に靴ずれを起こしては目も当てられません。なのでこのモデル、カカト周りにもしっかりベルトがついており、カカト幅を調節できます。

靴ずれとサヨナラ。「滑り止めソックス」という最強の選択肢と、ナイキ「エアリフト」の驚きの効果
写真は公式HPより
私はスニーカーマニアですが、「カカト幅まで調節できる」モデルはサンダル以外だとほぼ思いつきません。ヒールの下にナイキエアも入っており、疲れとは無縁。シンプルなデザインで、服装を選ばないのも嬉しいところ。


帝人の「繊維テクノロジー」が足を守る。最強グリップインソールはこれ

靴ずれとサヨナラ。「滑り止めソックス」という最強の選択肢と、ナイキ「エアリフト」の驚きの効果
ニューバランスの「サポーティブリバウンドインソール」がベストです。2200円。写真は公式HPより
インソールにもグリップが効くと、靴ずれはかなり予防できます。最小限のコストで最大限のグリップ力を求めるなら、ニューバランスの「サポーティブリバウンドインソール」がベストです。2200円。

写真ではわかりませんが、足に触れるグレーの表面は、繊維で有名な帝人の「ナノフロント」という特殊繊維が貼られています。髪の毛の7500分の1という驚異的な細さの繊維で編みこまれているので、限られた空間で表面積を最大化し、グリップします。そのおかげで靴ずれ知らず。スニーカー、ビジネスカジュアル、革靴でインソールが取り外せるものであれば、取り替えるとそのグリップのすさまじさに誰もが驚くはず。全国のABCマートで販売されているので、入手も簡単なのが嬉しいところ。

靴ずれは誰もが通る道ですが、1)ソックス、2)足袋スニーカー、3)インソール、のどれかに変えるだけで、あっさりと解決します。顎とマウスピースの関係と同様に靴と足がガッチリとグリップすると、足の力と靴の力を100%発揮できるので体の動きも変わってきます。お悩みのかたは、ぜひお試しください。


【シューフィッター佐藤靖青】
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』
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