仮に自分が窓側席に座っていて途中駅で下車する場合、通路側の席の乗客に「すみません」と声をかけて通してもらうのが一般的なマナーだ。
ところが、声をかけられても知らんぷりを決め込み、通せんぼをする意地悪な人もいるようだ。
窓側席の乗客が声をかけているのに無視…
精密機器メーカーに勤める坂下光彦さん(仮名・28歳)は、今から半年ほど前、名古屋駅に到着直前の東海道新幹線のぞみ号の車内でその現場を目撃する。「平日の午後でしたが、乗っていた車両(指定席)は7割ほど埋まっていました。私は3列シート通路側のC席に座り、トラブルが起きたのは通路を挟んだ2列シート。窓側のE席に座っていた40歳くらいのスーツ姿の男性が『すみません』と何度も声をかけているのに、D席(※反対側の通路席)の若い女性は無視。男性はすでに立ち上がっていましたし、彼女も目は開いており、耳にイヤホンも付けていなかった。隣の男性はすでに立ち上がっているわけですから、気づかなかったというのはありえないと思います」
のぞみ号に使用されるN700系車両の指定席・自由席の足元スペースの奥行きは約50㎝。座っているのが標準体型の女性であれば十分通れそうな気もするが、この女性は両足を組んで前に投げ出すようにして座っていた。そのため、完全に道を塞ぐ形となっていた。
「髪は赤いメッシュが入ったセミロングで、指先にはキラキラ光るゴツめのネイル。しかも、サングラスをしており、いかにも夜職の女性のような雰囲気が全開で……。その格好もあってか、とにかく感じ悪かったですね(苦笑)」
女性の足を押しのけて強行突破!
ただし、列車はすでに速度をかなり緩め、出口付近には行列ができ始めている。男性は「降りるので通してもらえますか」と改めて女性に声をかけ、苛立っているのか語気も少し強めだったとか。それでも女性は一瞬チラッと見るだけで足を引っ込める様子はない。すると、これにしびれを切らしたのか男性は強硬手段に出る。なんと女性の足をヒザで強引に押しのけて通路側に出たのだ。
「間近で見ていましたが、押しのけるというより“吹っ飛ばす”という言い方のほうが正しいかもしれません。その衝撃で女性の足は通路側に向き、持っていたスマホも落としていました」
女性は叫び声や文句を口にすることはなかったが、下車する乗客の列の最後尾に並ぶ男性の背中を1~2秒眺めていた。サングラスで表情は読み取れなかったが、睨みつけているように見えたそうだ。
スマホを拾ってあげたときの女性の反応

「彼女の爪が思いっきり当たり、切れはしなかったですけど、すごく失礼な態度でしたね。出張中で揉め事は避けたかったので何も言いませんでしたが、プライベートだったら文句のひとつでも言っていたかもしれません。
ひとつ疑問に思ったのは、彼女が頑なに男性を通そうとしなかった理由。声をかけられても無視するって余程のことですし、どんなに機嫌が悪かったとしても普通の人は絶対にやらないじゃないですか。私がスマホを渡した時の態度にしてもそうですし、一般的な常識やマナーが通用しない相手もいるんだなって。
相手がケガしたら自分が加害者になるので注意
ちなみに名古屋駅から乗ってきた乗客にも同じように通せんぼするのかと危惧したが、幸いにも彼女の隣に座る乗客はなし。終着・新大阪駅に着くと、彼女は何事もなかったかのように降りていった。「もし女性の隣に座っていたのが自分だったら……と考えてみましたが、私でも最後は強行突破しかなかったと思います。どう見ても下車しようとする男性を邪魔した女性に非がありますし、ここだけの話、彼女の足がヒザで蹴り飛ばされた瞬間は見ていてスッキリしましたね(笑)」
とはいえ、これで相手がケガを負ってしまった場合、経緯はどうであれこちらが加害者になってしまう。同じような場面は滅多に訪れないと思うが、蹴り飛ばすのではなく、相手の足をまたいで越えるようにするのがいいだろう。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。