サッカー戦術解説で名を馳せるYouTuber、レオザフットボール。歯に衣着せぬ物言いで人気を博す一方、自ら社会人クラブ「シュワーボ東京」のオーナー兼監督を務める実践者でもある。
森保ジャパンへの本音、クラブ運営のリアル、そして業界の常識を覆す「サッカー版ブレイキングダウン」構想まで。謎多き風雲児の胸の内に迫った。

誤解されがちな音楽活動

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水野:2025年も上半期を終えて、レオザさんの活動はますます多岐にわたっている印象です。ご自身の体感としてはいかがですか?

レオザフットボール(以下、レオザ):ありがたいことにいろいろな番組に呼んでいただいたりして、サポーターの方に応援してもらえているのは嬉しいです。ただ、僕自身が本当に熱量を注いでいるのは、自分自身の音楽と、監督を務める「シュワーボ東京」を勝たせることなんです。

 世間から評価される部分と、自分が熱くなっている部分に差があるので、むしろ周りの反響はあまり気にしなくなりましたね。どんな形であれ応援してもらえたら嬉しいし、僕は僕で結果を出さないといけない音楽とシュワーボ東京の2つに集中している感じです。

水野:サッカー解説者としてのイメージが強いですが、ご自身の中でのプライオリティは少し違う場所にあると。

レオザ:まさにそうで、他のメディア出演などは今の自分を“素”で伝えるだけでいいのですが、音楽とクラブ運営の2つは、能動的にブーストさせていかないと結果に繋がらない。ダイレクトに結果が求められる世界なので、どうしてもそこに懸ける想いは強くなります。特に音楽活動については誤解されがちなんですよね。

水野:誤解、ですか。サッカーで得た知名度を利用して音楽活動をしている、というような?

レオザ:そう見られがちですね。
以前、日本代表の配信でイジられたことがあって、そのときにちゃんと説明したんです。「サッカーの傍らで音楽をやっているんじゃなくて、元々こっち(音楽)をメインでやっていたら、後から始めたサッカー解説のほうで有名になってしまった。だからサッカーは“二つ目の本業”なんです」と。そしたら、むしろ「そんなに本気でやってたんだ」と応援してもらえるようになりました。

「サッカーは後からついてきた本業」音楽活動が創作の源泉

水野:なるほど、活動の順番が世間のイメージとは逆だったんですね。そもそも、どんな音楽を作られているんですか?

レオザ:僕が作るのは今の自分のリアルなので「リーダー目線の歌」です。監督や経営者の視点で、その活動の中で感じたことを歌にしている。僕自身が監督やオーナーとして戦っているリアルな気持ちを歌詞にしているので、どうしてもシュワーボ東京での活動とリンクせざるを得ない。

 今の楽曲の9割9分はシュワーボのことがテーマですね。だからサポーターの方が聴いてくれると、「あの時の監督は本当にこういう気持ちだったんだ」と、ドキュメンタリーのように楽しんでもらえているみたいです。

水野:それは面白い構造ですね。活動がストーリーになり、音楽がその時々の感情を補完する。もはやクラブ運営そのものが作品になっているような。


レオザ:歌唱法はラップで、僕自身は「戦っている人への応援歌」として捉えています。だからアーティスト名も「名久井レオ」のまま。もう、自分の生身を全部さらけ出している感覚に近いですね。昨日もちょうど新しいMV(ミュージックビデオ)を出したばかりなんですよ。

水野:それはすごい。メディアでの“理論派”のイメージとは別に、クリエイターとしての“情念”みたいなものが活動の根幹にあるんですね。

レオザ:そうかもしれません。僕がやっていることを見てくれている人がいる、という実感があればそれでいいと思っています。褒めてもらえる部分と自分が熱量を注ぐ部分に差があっても、もう気になりません。今は音楽とシュワーボ東京、この2つで結果を出すことに集中しています。

森保ジャパンに「戦術」はない? 監督の仕事とは

「戦術を小手先と言うなら監督の仕事は何?」レオザフットボールが森保ジャパンを斬る。“素人から成り上がる”クラブ経営の舞台裏
水野:では、その専門分野であるサッカーについてお聞きします。2026年のワールドカップに向けて予選も突破しましたが、現在の森保ジャパンをどう評価されていますか? 率直に言って、どこまで行けると思いますか?

レオザ:どこまで行けるかは、もう「組み合わせ次第」としか言えませんね。前回のワールドカップがいい例で、ドイツやスペインのように、相手がボールを持ってくれて、なおかつ日本の5-4-1の守備と相性が悪いチームと当たれたのは幸運でした。


 でも、コスタリカのように日本側がボールを持たされてしまうと、途端に厳しくなる。今回は日本も強者として見られるでしょうし、相手も油断なく対策してきますから。

水野:なるほど。森保監督の手腕についてはいかがでしょう。足りない要素はあると思われますか?

レオザ:いい点でいえば、森保監督は日本サッカー協会がコントロールしやすく、選手との揉め事も起きにくいことです。広報活動にもしっかり貢献してくれる。これは組織としては非常にやりやすいはずです。

 ただ、良くない点で言うと、相手に合わせた戦術の組み立て、チームとしてのオーガナイズが無いというか「薄い」んですよ。これはもうメディアや選手の発言からも明らかになってしまっています。

水野:また手厳しいですね…。

レオザ:森保監督自身が「戦術でサポートするような小手先のことをやると、選手の成長のためにならないからやらなかった」という趣旨の発言をされていますが、僕はあれは言い訳だと思っています。

 そもそも戦術を「小手先」と言ってしまったら、監督の仕事って何なんですかという話になりますし、これまで戦術を突き詰めてきた先人たちへのリスペクトもない。
そういう哲学を持っている監督だと、それがチームの限界値になってしまうんです。

水野:つまり、今の代表は監督が助けてはくれないから、選手の個の力だけで戦っている状態だと。

レオザ:その通りです。幸い、日本のタレント力は育成年代の頑張りもあって非常に高くなっています。だから監督が選手の邪魔はしないけど、助けてもあげられない。今の代表は、素材そのものの力でどこまで行けるかっていう勝負をしている状態だと思います。

素人から成り上がりJリーグ昇格を目指す。シュワーボ東京の異常な熱狂

「戦術を小手先と言うなら監督の仕事は何?」レオザフットボールが森保ジャパンを斬る。“素人から成り上がる”クラブ経営の舞台裏
水野:一方で、レオザさん自身が監督を務める「シュワーボ東京」の動向も非常に気になります。現在の状況はいかがですか?

レオザ:今はリーグの中断期間に入ったところですね。前半戦は5勝1分けで、全勝とはいきませんでしたが、主力のケガ人が続出する中で、選手たちは本当によく頑張ってくれました。

 チーム全体の底上げもできましたし、最低限の結果は残せたと捉えています。僕らのチームと首位のチームが同率なので、後半戦も自分たちに矢印を向けて戦うだけです。


水野:シュワーボ東京は、レオザさんにとってどんな存在意義を持つチームなのでしょうか。

レオザ:僕は人に言うだけでなく、自分で実践するのが好きな人間なんです。監督としてだけでなく、オーナーとしてクラブを強くすることに面白さを感じています。世間で注目されるのは“アイコン”である監督ですが、クラブを本当に強くするのは経営手腕を持つオーナーなんですよ。レアル・マドリードがなぜ強いかといえば、オーナーであるフロレンティーノ・ペレスの経営手腕があるからです。

水野:監督兼オーナーとして、その両方を実践していると。

レオザ:はい。お金集めから練習場の確保、現場での練習指揮、試合の采配まで、全部自分でやっています。僕がやりたいことをやっているだけなんですが、この「素人から成り上がったクラブ」が結果を出し、そのプロセスを見せることで、自然と日本サッカーの強化に繋がると信じています。「Jリーグ昇格」という長期的な目標も変わりません。なるべき時がくれば、自然となっているはずです。

水野:その熱狂はファンにも伝わっているようで、この前の試合ではものすごい数の観客が集まったとか。


レオザ:ありがたいことに、最終戦では400人くらいの方が来てくれました。まだ東京都社会人サッカーリーグの2部でこれは嬉しい想定外です。もともと僕のオンラインサロン「レオザ学園」が、今では完全にシュワーボ東京のサポーターズクラブのようになっているんです。今後は練習場やクラブハウス、さらにはスタジアムを自治体と協力して作っていくプロジェクトも動き出しています。

「サッカー版ブレイキングダウン」構想。1対1大会で業界を稼がす

「戦術を小手先と言うなら監督の仕事は何?」レオザフットボールが森保ジャパンを斬る。“素人から成り上がる”クラブ経営の舞台裏
YouTubeで1対1のゲームを配信している
水野:クラブ運営だけでも壮大ですが、さらに新しいチャレンジを構想しているそうですね。

レオザ:ええ。今後3年でチャレンジしたいこととして、サッカーにおける「1対1の大会」を開きたいんです。言うなれば、“サッカー版ブレイキングダウン”みたいなものですね。

水野:サッカー版ブレイキングダウン! それはまたキャッチーな(笑)。具体的にはどんな内容なんですか?

レオザ:サッカーの11対11だと、どうしても個人の物語性が見えにくい。でも1対1なら、格闘技のように個人のストーリーにフォーカスできるんです。

 例えば、プロ同士が戦ってもいいし、タレントさんや著名な方同士が1対1で対決したら、見てみたくないですか? “文脈”さえ共有できれば、プレーのクオリティとは別の次元で楽しめる。そこから派生させて、2対2のタッグマッチや、キーパーありのルールも面白いと思っています。

水野:確かに、サッカー観戦の裾野が一気に広がりそうです。

レオザ:そうなんです。それを興行化して、フットサル場などでイベントとして開催する。大会が大きくなればスポンサーさんも付いてくれる。そのお金で大会をさらに盛り上げつつ、一部はシュワーボ東京の強化費に充てる――。サッカーでお金を稼いで、サッカーチームを強くする。最高のソリューションだと思いませんか? 実は明日、自分のチームでその実験をやってみるんですよ。

成功しても苦しいのは当たり前。批判は暇だから気になるだけ

水野:YouTubeでの成功、クラブ運営、そして新たな事業構想と、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いですが、レオザさんにとっての「成功」とは何なのでしょうか。

レオザ:昔は、ご飯が食べられるようになるとか、承認欲求が満たされることが成功だと思っていました。でも、いざそこが満たされても、今度は「結果を出し続けられるか」とか「信じてついてきてくれた人をがっかりさせないか」という新しいプレッシャーに追われて苦しくなります。結局、どのフェーズにいても苦しさの種類が違うだけで、常に何かしらの苦しみはあるんですよ。

水野:突き詰めて考える性格なんですね。

レオザ:そういう性格なんでしょうね。だから、言っちゃえば「ずっと成功してるし、ずっと成功していない」感覚です。批判については気にしないですね。結局、批判を気にできるのって、暇な時なんですよ。今はありがたいことに、そんな暇もないくらいやるべきことに追われていますから。

水野:そうした哲学は、ご自身のプライベートの価値観にも影響していますか?

レオザ:影響していると思います。僕には子供はいませんし、私も妻もやりたいことに時間を使いたいタイプなんです。子供がいない寂しさのようなものは、シュワーボの選手やスタッフ、サポーターの皆さんとの繋がりの中で満たされているので。僕の場合は、家族との時間というより、音楽やチームを「作る」という時間にリソースを割いている形ですね。

水野:最後に、これから何かを目指す若い世代にメッセージをお願いします。

レオザ:結局、成功する人はするし、しない人はしない。だから、とにかく好きなことをやるしかないと思います。僕だってお笑いの世界ではダメだった。でも、今の仕事で人に求められている。

 どの幸運に当たるかなんてわからないから、とにかく打席に立ち続けるしかないんです。そして、たとえ成功したと思っても、苦しむ人間はまた次の苦しみを見つけるもの。だから、あまり気負わず、自然体でやり続けるのが一番いいんじゃないでしょうか。

【プロフィール】レオザフットボール
サッカー戦術系YouTuber、音楽クリエイター、実業家。お笑い芸人として活動後、2016年よりYouTubeチャンネル「Leo the football TV」を開始。独自の戦術分析動画が人気を博し、チャンネル登録者数は30万人を超える(2024年6月現在)。自ら代表取締役兼監督を務める社会人クラブ「シュワーボ東京」を率い、約4,000人の有料会員が参加するオンラインサロン「レオザ学園」を運営。近年は著書『蹴球学』が6万部に迫る勢いで大ヒットするなど、多面的な挑戦を加速中。

<取材・文/水野俊哉・高橋真以>

【水野俊哉】
1973年生まれ。作家、出版プロデューサー、経営コンサルタント、富裕層専門コンサルタント。ベンチャー起業家、経営コンサルタントとして数多くのベンチャー企業経営に関わりながら、世界中の成功本やビジネス書を読破。近年は富裕層の思考法やライフスタイル、成功法則を広めるべく執筆活動をしている。現在は自ら立ち上げた出版社2社や文化人タレントプロダクション、飲食業のオーナー業の傍ら、執筆やコンサルティング、出版プロデュース業を営んでいる。国内外問わず富裕層の実態に詳しく、富裕層を相手に単にビジネスにとどまらない、個人の真に豊かな人生をみすえたコンサルティング・プロデュースには定評がある。
著書はシリーズ10万部突破のベストセラーとなった『成功本50冊「勝ち抜け」案内』(光文社)など27冊、累計40万部を突破。最新刊に『成功する人は、なぜリッツ・カールトンで打ち合わせするのか?~あなたを超一流にする40の絶対ルール~』(サンライズパブリッシング)がある。
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