AV新法が導入されて以来、公式団体の審査を受けてから販売されるビデオを「適正AV」と呼ぶようになった。事務所も「プロダクション協会」と呼ばれる組織へ加入しなければならず、この集まりから外れると“適正”界隈での活動はほぼ不可能だ。

適正ではない「同人」の世界

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 適正AVが存在する一方で、団体の審査を通さず、協会にも加盟せずにビデオを制作・販売・出演するのが「同人」に関わる人々だ。正規ルートではないために“非公式”扱いを受けるものの2019年頃より知名度を上げ、一時期は“適正”を好むユーザーたちも同人作品へと流れた。

 そして「爆発的に稼げる」と話題になり、表から裏へシフトチェンジする業界人も、実際に多かったという。

 さまざまな世界にも公式と同人は必ずあるものだけれど、最近の同人界隈は以前に比べると、やや苦戦を強いられているらしい。しかし、一部では相変わらず順風満帆なようで、非公式の世界にも大きな格差が生まれてしまった。

同人作品に出演するメリット

 一部では「適正ビデオより非公式が良い」と絶賛するユーザーがいる。彼らは作り込んだモノよりも、手作り感満載のリアルな映像に親近感を覚えるため、「没入するなら同人一択」だと鼻息荒く語る。

 このような意見を述べる人々は意外にも多く、同人界隈が盛んになる少し前は「作品を出せばそれなりに売れる」状態だった。適正ビデオに比べると作り込みも要らず、出演・制作者も最低人数で良い。おまけに尺も短いので撮影現場がサクッと終わり、撮り溜めがあればYouTubeチャンネルのごとく新作を毎日販売できる。とにかく、非公式は手軽さが一番の魅力なのだ。

 審査もないとなれば内容や表現に関する自由度も高く、リアルタイムの販売が可能。締め付けがユルいとフリーダムな動きをしても白い目で見られることもなく、周りを気にせずに活動できるのもメリットだ。漫画の同人サークルと全く同じで公式に激しく迷惑をかけなければ、「割と何でもアリ」な世界ではある。


 一時期はブルーオーシャンとまで言われた界隈で、AV新法導入後もしばらくは大ブームが続いていた。手軽に作れて儲けられたからこそ参入者も多かったのだが、母数が増えれば競争率も上がる。さらに同人界隈の逮捕者や求人トラブル等の問題も相次いだせいで、ブーム前ほどの勢いが失われたそうだが……。

表の世界にはないデメリット

 そもそも、同人界隈に参入する理由はなんだろうか。制作と出演者によって考えは異なるが、制作の場合は「売り上げを丸儲けしたい」「厳しい縛りがない中で作品を作りたい」「どんどん厳しくなる適正の世界に不安を覚えた」と、制作陣ならではの意見がチラホラと聞こえる。

 そして出演者の場合は「事務所に入るのが面倒くさい」や「中抜きをされたくない」「ギャラが入ってくるまでのタイムラグが発生すると困る」といった、“収入”にベクトルを置いた声がほとんどだ。

 このような双方の希望と、ユーザーのニーズがマッチするから同人が成り立つのだけれど、いいことばかりではない。母数が増えてから早々に売り上げが下がるサークルが急増し、客の取り合いになってしまった。

 ただ作ったものを垂れ流すだけでは数字が伸ばせず、新しい出演者を取り入れて工夫をせねばあっという間に停滞する。最近では思うように売り上げが出せずに閉鎖するサイトも出てきたとのこと。

金銭面で揉めるリスクも…

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元セクシー女優で現在はフリーライターの「たかなし亜妖」
 また適正AVと違い、契約書を一切作らないサークルも存在し、トラブルに発展する例も少なくはない。表のような厳しいルールもないが、そのぶんいい加減にすることも可能であるため、出演者や仲介人(スカウトマン)と金銭面で揉めるなど、“初歩的すぎる問題”がいとも簡単に生み出されるのも、同人界隈のデメリットだろう。

 ただ、守られていない中での活動となるのだから、大きなデメリットが生じるのは仕方ないといえる。悪い部分を理解したうえで参入する人たちでうまくやれたらいいものの、目先の売り上げだけに釣られ、都合の悪さを無視する困った大人も多い。


 特に即日・即金を望む女の子たちはお金のこと以外が頭にないため、契約書のような面倒事をすっ飛ばしたがる。この手のタイプとうまく付き合わねばならないのも、同人の大変なところなのだ。

「稼げればなんでもアリ」ではあるが…

 第三者からすると適正も同人も何ら変わりがないように思えるけど、蓋を開けると大きな違いが見られる。どちらが良い・悪いかは判断が難しく、正直なところ「稼げればなんでもアリ」なのかもしれない。

 ただ、どこまでいっても同人は同人で、公式になる日はこないのだ。二番手、三番手の現実を理解しなければならないのと、ルールが緩いがゆえのリスクは必ず頭に入れておきたいところ。

「参入すれば稼げる時代」が終わりつつあるからこそ、ビデオ界隈の人間は一工夫、いやそれ以上のアレンジをしないと、今後はさらに厳しくなるだろう。

文/たかなし亜妖

―[元セクシー女優のよもやま話]―

【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。
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