事件後、男2人は逮捕され、19日には被害者のフリをしていたアルバイト従業員の村山廉容疑者(21)も共犯で逮捕された。
このニュースを耳にして「そもそもパチンコ店の事務所って、なぜこんなに大金を置いているの?」と思った方も多いのではないだろうか。そこで、関東近郊で10店舗以上展開しているチェーン店で店長を務めるS氏に、パチンコ店における現金の扱い方やセキュリティに関するお話を伺った。
なぜ2800万円もの大金があったのか?
閉店後に売上の集計をするため、一時的に大量のお金が事務所に集まるのは想像ができる。だが、その後は銀行の夜間金庫などに預けたりはしないのだろうか。「銀行の夜間金庫に預けるのは、その日の利益分だけですね。じゃあ、残りのお金はどうするのかというと、翌日の営業で使用する、特殊景品代や精算機に入れる釣銭用として事務所の金庫に入れてあります。特殊景品代は、翌日納品しに来る業者の方に現金で払うのが基本なので」
特殊景品の購入は常に現金払い。しかも、最近ではどこのホールでも導入しているサービスのために、それなりの量の特殊景品を毎日購入する必要があるそうだ。
「最近は貯玉システムを導入しているお店がほとんどで、その貯玉はいつ交換されるかわからないじゃないですか。大量に貯めていたお客さんが一気に全てを交換しようとした時に、『特殊景品が品切れなので交換できません』とは言えないので、その分も見越して用意しておく必要があります。今回、襲われたお店は1000台規模の大型店なので、3000万円ちかくの大金が事務所に置いてあっても全く不思議ではないですね」
パチンコ店絡みの事件は関係者の犯行が多い
営業するうえで必要となるお金は毎日事務所に置いてあるとのことだが、一般の人にその事実はあまり知られていない。ゆえに、パチンコ店や交換所を襲う事件は、内部関係者が犯人だったというケースが多いとS氏は語る。「今回みたいな事件は、内部犯行や元従業員が犯人だったというパターンが多いんですよね。
S氏に話を聞いたのは事件が発生した翌日の8月13日。当時はまだ従業員の関与は明らかになっていなかったが、結果的に今回の事件でも内部に共犯者が存在していた。
パチンコ店の厳重な防犯体制
また、交換所だけでなく、事務所にも大金が置いてあるのならば、当然セキュリティも厳重なはず。実際、どのような防犯体制になっているのか聞いてみた。「セキュリティの度合いはお店によって異なるでしょうが、ウチの場合は一日の営業が終わり戸締りをして一度お店を出た後、再び入館すると即座に警備会社へ発報されます。だから、絶対に忘れ物ができない(笑)。仮に車の鍵を事務所に忘れたなんてことがあったら、歩いて帰るか朝まで待たないといけなくなるので……。今回の事件は、従業員の人がお店から出てきたところで脅されているようですが、もし同じようなシステムを導入していたら、速攻で警備会社の人が駆け付けて、その場で確保されていたと思いますよ」
目先のカネよりも“イメージダウン”を恐れる

「もちろん、ウチのお店も保険には入ってますが、基本的に災害関係のものだけ。今回のような事件で補償される保険はあまり聞いたことがないですね。もしかしたら、付属で多少は補償される契約があるのかもしれませんが、少なくとも一般的ではないです」
となると、事件が解決しないと、その後の出玉率に影響が出てくるのではないかと心配になるパチンコファンもいそうだが……。
「パチンコ店って日頃から大きなお金が動いているから、一般の人からすると『2800万円も!?』って思うかもしれませんが、特に大型店舗からするとそこまで大きな金額じゃないと思います。
パチンコ店での犯行はすぐに捕まる
最後にS氏は「パチンコ店はコンビニや郵便局とくらべ防犯カメラの数がとにかく多い。ほぼ、死角が無いと言っていいくらい網羅しているから、今回みたいな事件があってもすぐに捕まりますよ」と語った。ぜひ、今後も強固なセキュリティを維持しつつ、いつでも安心して遊べる遊技場であってほしいものである。取材・文/サ行桜井
【サ行桜井】
パチンコ雑誌『パチンコ必勝ガイド』『パチンコオリジナル実戦術』の元編集者。四半世紀ほど勤めた会社を退社しフリーランスに。現在は主にパチンコや競輪の記事を執筆している。