来年6月に開幕するFIFAワールドカップ26で「優勝を目指す」と公言しているサッカー日本代表は、強化のためにアメリカで合宿している。9月6日(日本時間7日11:00キックオフ)にはメキシコ代表と、9日(日本時間10日8:37キックオフ)にはアメリカ代表と対戦。

 両国とも本大会の開催国であり、今年12月5日(日本時間6日2:00開始)に行われる組み合わせ抽選会の結果次第では、グループリーグで同組となり、本大会でも対戦国になる可能性は十分にある。日本代表は本大会9カ月前に、そういった相手との強化試合に現在考え得る最高のメンバーで臨むわけだ。

“理想のメンバーではない”日本代表…“強豪”メキシコ代表戦で...の画像はこちら >>

メキシコとアメリカは相手にとって不足なし

 先に対戦するメキシコはワールドカップ出場17回で、最高位がベスト8のいわずと知れた強豪だ。アメリカ代表も出場19回、最高ベスト8の強豪といえる存在。このような強豪と敵地かつ実際の開催地で対戦できる機会は貴重ゆえ、戦略面の強化以外に多くのことを得て、チーム力全体の強化につなげてほしい。

 今年3月に予選を突破してワールドカップ本大会の出場を決めた日本代表の現状は、本大会で勝つための準備期間であり、強化期間といえる。極論をいえば試合の勝敗は二の次となり、それよりも試合内容を次へ、来年につなげられるかが重要といえる期間だ。

本大会に影響を及ぼす可能性も

 プライオリティとしては“勝利よりも内容”という優先順位になるのは間違いないが、この試合の勝敗が本大会に影響することは間違いない。12月に抽選会が行われるのだが、そのときのシード順は直近(11月)までの試合結果によって計算されたFIFAランキングによってシードが決まる。日本代表は7月10日付で発表されたFIFAランキングでは、前回より2ランクダウンの第17位に位置している。

 ちなみに今回の対戦国となるメキシコ代表は4ランクアップで第13位、アメリカ代表は1つ順位を上げて第15位となっている。彼らは開催国なのでFIFAランキングが何位であろうとも、シード枠は最高位のポッド1に入ることが決まっている。

 しかし、現状ではポッド2が濃厚な日本代表は、今回のメキシコ戦、アメリカ戦、10月開催予定のパラグアイ戦、ブラジル戦、さらに11月の2試合までの結果によっては、数字上はポッド1に入れる可能性を残していれば、ポッド3に下がることもあり得る順位なのだ。

 もちろん楽な相手など1つもないが、ポッド1に入れればランキング上は格下だけになるし、優勝経験国といった最上級の強豪国や開催国とのグループリーグでの対戦は避けられるメリットがある。
一方、ポッド3になると前回大会のように優勝経験国2カ国と同組になるといった可能性も出てくる。来年6月までは強化期間とお伝えしたが、9月~11月までと、それ以降では意味合いは変わってくる。

センターバックはさながら野戦病院…

 最高のメンバーとはいうものの先述したとおり現在考え得る最高であって、負傷者が続出し理想のメンバーとはいい難いのは事実である。センターバックでいえば、町田浩樹(ホッフェンハイム)、冨安健洋(無所属)、伊藤洋輝(バイエルン)、高井幸大(トッテナム)が負傷で招集されなかった。ほかにも守田英正(スポルティング)と田中碧(リーズ)も同様の理由で招集を見送られている。

 ただ、こういったことはよくある話で、本大会でも負傷などを理由に思うようなメンバーを招集できないことは十分に起こり得る。負傷している選手には申し訳ないが、むしろ9カ月前だからチームにとっては不幸中の幸いととらえられる側面もある。とにかく負傷者は無理なく快復に努めてもらい、本大会を万全で臨めるように準備を整えてもらいたい。

日本代表スタッフの力の見せどころに

 負傷者が続出するなか、さらに負傷者が増えることは避けたい。選手は各クラブでも戦っているので本大会までの全期間に責任はもてないが、強化期間の合宿中や親善試合で負傷させるようなことは日本代表スタッフとしては絶対にあってはならないことになる。これからの期間のケガは程度にもよるが、ワールドカップに出場して勝つという選手の夢を奪うかもしれない。

 つまり、この強化期間は決して無理をする期間ではない。勝ちにはこだわらなければならないが、選手にはケガがないように十分なケアが必要だ。


 具体的な戦術面でいえば、ケガのリスクを少なくするため、極力フィジカルコンタクトを避けつつも相手に勝つ方法を森保監督は考えてほしい。かつ、チームの強化につなげられるような成果が求められる。この期間こそ、実は監督をはじめとする日本代表スタッフの力の見せどころになるのだ。

<TEXT/川原宏樹 撮影/松岡健三郎>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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