老後不安を抱える中年が増加する現代、その解決策はガテン系にあり! 稼ぎながら体を鍛え、健康を維持して“現役寿命”を延ばすことが、豊かな老後生活に繫がるからだ。おまけに、ガテン系職の多くは「AIに駆逐される」リスクもナシ。
中年から始めるべき肉体派の仕事を調査した。

10か月の海上生活で年収1000万円以上!

「20代の1000万円プレーヤーが何人もいる」マグロ漁船員の...の画像はこちら >>
20~30代船員
仕事・マグロ漁船員
未経験から5年程度で年収1000万円

超高収入が期待できる肉体派の仕事といえば、「遠洋マグロ漁船」を思い浮かべる人も多いだろう。

かつては、借金返済のためにマグロ漁船に送り込まれたといった話も都市伝説的に語られたが……実際のところはどうか?

「20代の年収1000万円プレーヤーは何人もいるので、他の職種に比べて、若くして稼げるのは間違いないでしょう」

こう話すのは日本かつお・まぐろ漁業協同組合の佐藤康彦・船員職業紹介所長だ。背景には、仕事の過酷さに加えてマグロ漁船員の高齢化や国際情勢の変化があるという。

「正直、キツい仕事であることは間違いないでしょう。遠洋マグロ漁船になると約10か月の航海となることが多く、漁場に着いたら時化るなかでも長時間働かなくてはならない。約3000本の釣り針がついた全長150kmにもなる幹縄を数時間かけエサをつけて投縄(とうなわ)し、2~3時間休憩したら、12時間以上かけて引き上げるという仕事を交代制で行うのが一般的です。

そのほかにもマイナス60℃の凍結庫で200~500kgにもなるマグロを運んで管理する仕事を、結構な負担に感じる人も多い。釣り針が飛んできてケガしたり、揺れる船上でのマグロの解体で手を切ることも稀にあります。

体力に加えて、電子機器を活用した高度な航海術、機関技術などを要求される仕事なのですが……遠洋マグロ漁船の船員の60%以上が60~70代で、80代も3%いるという、かなり高齢化が進んでいる業界なのです。

若手の層が薄いため、経験を積んで技術を身に着ければ短期間で何百万円も収入がUPしやすい。実際、2~3年経験を積んで海技士免許を取得して、とんとん拍子で機関長(船舶機械等責任者)に昇格して29歳で2000万円近くもらっている人もいます。

原油高で操業を停止する外国船籍が増え、その影響で日本のマグロに高値がつきやすくなったこともあって高給取りの船員が増えている」

「20代の1000万円プレーヤーが何人もいる」マグロ漁船員の告白。航海中は食費も住居費もゼロ…10か月の海上生活の実態とは
マグロを引き揚げる様子。過酷な環境でも、喜びを爆発させるようにバンザイする船員の姿が(「japantuna」より)
 稼げるだけではない。
貯まりやすいのが、マグロ漁船員の特徴だ。

「船員法で船舶所有者が船員の食事や居住設備を提供しなければならないと定められているので、航海中は食費も住居費もゼロです。体力仕事なので、インドネシア人コックが毎日4~5食ふるまってくれます。

3か月に一度は寄港して休暇を取る操業形態の船もあるので、そのときに散財してしまう船員もいますが……財布のヒモが固い人ならば高額収入のほぼすべてを貯金できるでしょう。

だから、3~4年乗って、2000万円以上貯める人もいる。また、3年の乗船履歴がつけば、1年休んで海技士の資格を取得し、また遠洋マグロ漁船に乗るという人もいます」

「20代の1000万円プレーヤーが何人もいる」マグロ漁船員の告白。航海中は食費も住居費もゼロ…10か月の海上生活の実態とは
日本かつお・まぐろ漁業協同組合の佐藤康彦・船員職業紹介所長(写真右)。佐藤氏が企画・出演するYouTube「japantuna」で遠洋マグロ船のリアルな生活などを配信中

乗船希望者は増え続けている

佐藤氏は、そんな特殊な仕事に挑戦しようという人が今、増え続けていると話す。

「多い日は週に4~5人からマグロ漁船員になりたいと連絡をもらいます。あまりにも希望者が多すぎて、乗船待ちが出ているほど。水産高校を卒業したばかりの10代の希望者も増えているほか、40~60代の会社員の希望者も増えています。

先日は、60歳で定年退職された元警察官の方から『マグロ漁船に乗るのが夢だったんです』と連絡をいただきました。『毎日トレーニングしているので体力には自信がある』と。

「20代の1000万円プレーヤーが何人もいる」マグロ漁船員の告白。航海中は食費も住居費もゼロ…10か月の海上生活の実態とは
遠洋マグロ漁船は時化るなかでも操業する。時には船上で大波を食らう船員もいるが、佐藤氏は「波に攫われて海に落ちる船員はいない」と話す(「japantuna」より)
一方で、若手だと御三家中高出身などの高学歴の乗船希望者も増えています。中には国内トップの国立大卒で現在2航海目という人もいる。
高収入に魅力を感じて応募されるだけでなく、大海原に出て体一つで資格とスキルを身に着けて稼ぐというロマンを求めて応募される方が増えている。

なので、今は、借金返済のために乗りたいという人はお断りしています。そんな状況なので、海技士の免許所持者やマグロ漁船の経験者を除いて、中高年の希望者もお断りさせてもらうことも増えています……。業界の高齢化に歯止めをかけるためには若手を幹部候補として育てる必要があるためです」

遠洋マグロ漁船は長く自由に働ける

「20代の1000万円プレーヤーが何人もいる」マグロ漁船員の告白。航海中は食費も住居費もゼロ…10か月の海上生活の実態とは
写真はイメージ
裏を返せば、若くしてマグロ漁船員としての経験を積めば、何歳まででも稼ぎ続けられる可能性のある業界なのだ。

「海技士免許のほか、船内でのケガや病気の処置を行う衛生管理者の資格などを持っていると重宝がられます。有資格者がいないと、出港できなくなってしまうからです。

また、5級海技士以上の免許を取得して技術を身に着ければ、機関部の最高責任者である機関長に昇格しやすくなる。機関長は仕掛けの操作やマグロの引き上げ業務などにあまり携わらず、機械室に詰めることになるので、年を取っても働けます。80代の現役船員がいるのはそのため。

実は、長く、自由に働き続けられるのが遠洋マグロ漁船なのです」

なお、海上生活のストレスも気になるところだが、昨年から世界中の海でも5G並みの通信速度がでる「Starlink」の導入が進んで大幅に改善しているという。

「20代の1000万円プレーヤーが何人もいる」マグロ漁船員の告白。航海中は食費も住居費もゼロ…10か月の海上生活の実態とは
帰港後に行われるマグロの水揚げの様子。引き揚げ時は夢中になっているため、水揚げ際になってマグロを獲った実感を得る船員も多いという(「japantuna」より)
「家族との連絡や動画視聴を楽しむ人もいれば、何か月も受け取れないのにネットショッピングを楽しむ人もいる。

若い人だとマッチングアプリでパートナーを探し、帰港を心待ちにしながらメッセージのやり取りを続ける子も多い(笑)。
海上生活の楽しみ方は、一昔前より格段に広がっています」

中高年でのマグロ漁船デビューは狭き門のようだが……早めに経験を積んでおけば、人生100年時代を不安なく過ごせるようになる可能性大! カネとロマンの詰まった遠洋マグロ漁船人気はまだまだ続きそうだ。

※2026年7月7・14日合併号より

取材・文/週刊SPA!編集部

―[中年からでも稼げる[ガテン系職]案内]―
編集部おすすめ