’25年10月の豪州での16歳未満SNS利用禁止を先駆けに、各国で未成年への規制が急拡大。’26年6月には英国がチャット等の規制拡大案を公表。
また、今月に入り、スペインが違法コンテンツを削除しない運営者の刑事責任を問う方針を示すなど、国家による一律規制は世界的な潮流となりつつある。
信州大学特任教授の山口真由氏は、未成年のSNS利用をめぐっては、国家による一律禁止だけでは子どもたちを守れず、むしろ見えにくい危険へ追いやる恐れがあるとみる(以下、山口氏の寄稿)。

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世界で広がる未成年SNS規制が抱える大きな矛盾

親の保護権と子どもの主体性はしばしば衝突する。したがって、親を擁護する右派と子どもを代弁する左派の反目は長く続いてきた。その両者が手を取り合って反対しているのが、いまや世界のトレンドになりつつある未成年者のSNS規制である。

オーストラリアが最初の実験場となって、16歳未満の子どもたちからXやインスタといったSNSアカウントを取り上げた。その波は欧州にも広がり、先月、イギリスはさらに規制対象を拡大する案を、今月にはスペインが違法なコンテンツを削除しなければ運営者に刑事責任を問う方針を公表した。

親の保護権の観点から、このSNS規制に反対する代表格はオーストラリアの政治家ジョン・ラディック氏だろう。彼は、SNSの海を遮断するのも、逆にそこに放り込むのも、親に選択権があると考えている。一方、ヒューマン・ライツ・ウォッチなど子ども側の守護者は、SNSを危険な環境にしているビッグテックのビジネスモデルこそが問題なのに、子どもたちに不便を強いるのはおかしいと考えている。両者が共通して異を唱えるのは国家による一律規制。なぜなら規制の網をかいくぐって、ペアレンタルコントロールのない、より危険なアングラへと、子どもたちが迷い込む恐れがあるからだ。

問われるのは「禁止」より親がどう管理するかだ

未成年者のSNS規制は、早晩、日本でも議論されるだろう。
その際に「一律禁止」の政治的インパクトを求めて、現実を置き去りにしたオーストラリアの教訓を生かさねばならない。現に、同国の未成年者の85%は依然何らかの方法でSNSを使用しているのだ。しかもフィルタリングの利かない、より危険な状態で。

中毒性のあるアルゴリズムを禁止して、SNSを子どもたちが安全に遊べるデジタル公園に変えようという左派の理想を諦めてはならない。だが、その実現はおぼつかない。だから、SNSの全面禁止ではなく、スマホの端末レベルで親が制限をかけられる方式という右派の提案は現実的な選択肢になるだろう。

いずれにせよ、「子どもの権利」とはSNSを縦横無尽に横断する自由ではない。目先の子どもの意思に迎合することなく、彼らが健やかに育つ環境を整えることこそが大人側の義務だと、私は信じる。

親による管理と聞いて怒る子もいるだろう。でも、アルゴリズムの濁流にわが子を放置するのではなく、その怒りもひっくるめて丸ごとぎゅっと抱きしめること。それこそが親の責任ではないか。

SNS「一律禁止」は子供をより危険な場所へ追いやる?山口真由が語るオーストラリアの失敗と親の責任
山口真由
<文/山口真由>

【山口真由】
1983年、北海道生まれ。
’06年、大学卒業後に財務省入省。法律事務所勤務を経て、ハーバード大学ロースクールに留学。帰国後、東京大学大学院博士課程を修了し、’21年、信州大学特任教授に就任
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