各社は「家系らしさ」をどのように再現し、差別化しているのか。メーカーと専門家に聞いた。
特定店の味を再現しない「概念家系」商品を販売するヤマダイの狙いは?
過去にはこの2種類以外の家系商品は販売しておらず、「この2種のリニューアルを繰り返しながら商品を磨く方針を掲げています」と話す通り、「ニュータッチ 凄麺 横浜とんこつ家」は2005年の発売以来17回のリニューアルを行い、現在18代目。「ニュータッチ 横浜家系豚骨醤油ラーメン」は2013年の発売以来5回のリニューアルを行い、現在6代目だ。
なぜ、あえて2種類の家系カップ麺を販売しているのか?
1番の違いは、麺です。『ニュータッチ 凄麺 横浜とんこつ家』は弊社独自製法のノンフライ麺を使用し、特許製法の『ゆで』と『熱風乾燥』による麺のもちもち感やなめらかさを実現、お店で食べるような本格的なおいしさをカップ麺でもお届けしています。
一方で『ニュータッチ 横浜家系豚骨醤油ラーメン』は油で揚げたフライ麺を使用しており、油であげた麺のジャンキーさ・カップ麺らしいおいしさをお楽しみいただけるよう商品を設計しています」(担当者)
この2つの商品は麺が違うだけではなく、麺との相性やコンセプトに合わせて、スープ・具材も変えているという。家系ファンはそれぞれ細やかに好みが分かれ、アンミカさん風に言えば「家系にも200食あんねん」ということか。
「家系ラーメンは、豚骨・醤油のバランスをはじめとして、お店によって特長・個性が様々です。弊社商品では、どこか特定のお店に似せるのではなく様々なお店を訪問し「家系ラーメン」全体を理解し、どのお店が好きな方も、家系ラーメンだと感じる味をつくりだすことを大切にしています。
ポイントとしては①鶏油が香る豚骨醤油スープ、②もちもちとした太麺、③具材の焼のりの3つが大事ですね」(担当者)
例えば、「ニュータッチ 凄麺 横浜とんこつ家」はリニューアル回数17回と、凄麺ブランドの中でも最多のリニューアル回数を誇る商品。これまでに、麺のもちもち感アップ、スープの醤油と豚骨のバランス見直しなど、様々なアップデートを行ってきている。リニューアルの度に「さらに再現度が高い一杯が完成した!」と自信を持ってはいるものの、その直後からさらに次のリニューアルに向けた議論を行うほど、常に“その次”を目指しているという。そこまでしてリニューアルを繰り返す理由は?
「お店ごとに特長が異なる家系ラーメンは“真ん中”をつくりだすことが難しく、その“真ん中”も時代によって変わっていると感じております。そのため、商品販売後もお客さまのご意見や、家系ラーメン店の現況などをふまえて味の方向性を変えるなど、リニューアルを行いながら商品を育てています」(担当者)
ここで言う“真ん中”とは、「食べた人がズバリ家系だ!と確信する味」のようなニュアンスだ。「ただし、家系ラーメンに関しては、みなさまが考える“ズバリ家系!”の幅が広いため、まだまだ模索中になります」と、家系ファンのために模索し続ける覚悟を感じる。
珍しい「縦型家系」のファミリーマート
ファミリーマートでも特定のお店のコラボではなく、概念としての「家系」商品。
「特に他社との差別化は意識せず、家系ラーメンの具材といえば想起される、ほうれん草・チャーシューなどを入れることに加え、“これぞ家系ラーメン”と感じる豚骨醤油スープにこだわっております」(担当者)
“制約”がある中で各社が工夫をこらす「家系カップ麺」
カップ麺の家系は、実店舗の何を再現しようとしている傾向にあるのか……。家系ラーメンに詳しいフードアナリストの中山秀明氏は、「誰もが想像する家系の特徴を6つ挙げるとすれば、①豚骨醤油(実際には鶏ガラも使います)、②鶏油、③酒井製麺の太くて短い低加水のストレート中太麺、④デカめの海苔(基本は3枚)、⑤ほうれん草、⑥燻製チャーシュー。メーカーさんは、この6つを意識して再現を試みていると思います」と語る。
コストとの兼ね合いもあるため、海苔がない家系カップ麺もあることに触れつつ、「ちなみに酒井製麺特有の短い麺や、燻製チャーシューをリアルに再現した家系カップ麺は、僕の知る限りではありません」とのこと。カップ麺で再現できる限界はあるが、その“制約”の中でどれだけ工夫できるかが鍵なのだとか。
中山氏はメーカーごとの違いについても教えてくれた。
「スープ、麺、トッピングのすべてに違いは出ます。わかりやすい例を挙げると、やはり日清食品はトータルで強い。長い社歴もさることながら、手がけてきた商品が多く、コンビニや専門店と切磋琢磨してきた経験も豊富で、麺以外の食品も手がけるなど知見に富み、そもそもチャレンジングな社風ですし、明星食品はグループ会社。
一方、他社にも強みをもつ分野があります。たとえば、ヤマダイの『凄麺』はノンフライ麵としては非常に高いレベルですし、エースコックは『スーパーカップ』のような食べごたえのある商品を作るのは得意。こうしたバックボーンを踏まえた開発力が、商品化された味にもにじみ出ると思います」(中山氏)
特に、名店コラボ商品と通常の家系商品では、“名店の味チェックが入るかどうか”が大きな違いだと話す。
「ゼロから名店が携わるケースもあるかもしれませんが、基本はメーカーが再現した試作品を店主などが味見して改善を繰り返す方法のはず。そこには、もちろん原価や仕様の制限もあると思います。たとえば、店主が希望しても容器の形状を縦型から横型に変更したり、粉末スープから液体のエキスタイプに変更したりすることが難しい場合もあります」
一方で通常の家系商品はメーカーのみで開発するため、“店主のこだわり”的な個性は出しにくいと指摘する。
「とはいえメーカーさんもプロですから、店主の監修なしのほうが万人受けする味に仕上がり、売れ行きはよかった、みたいなこともあるかもしれません」(中山氏)
王道の味があるようで、実は細かな違いと好みも千差万別の家系ラーメン。特にカップ麺ともなれば、「この味と食感が正解」はないのかもしれない。各メーカーの工夫・企業努力が凝縮されているわけだが、自分の好みのタイプを見つけることができればラッキーだ。
<取材・文・撮影/松本果歩>
【松本果歩】
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。
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