女優業は「気持ちを入れれば入れるほど、大事にすればするほど辛い」仕事だと語る貫地谷しほり(40歳)。中学生の時にスカウトされ、いわゆる朝ドラヒロイン(NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』)も経験し、今も一線を走り続けているが、辞めたいと思う瞬間が「最近までずっとあった」と口にする。

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 そんな貫地谷が、それでも続ける“挑戦”について語り、4年ぶりの“再挑戦”である4年ぶりの“再挑戦”となる、こまつ座の舞台『頭痛肩こり樋口一葉』での主演についても語った。

「辞めたい」と思うことは「最近までずっと」

——2002年の映画デビューから、25年近く経ちました。その間、「もう辞めたい」と思う瞬間はありましたか?

貫地谷しほり(以下、貫地谷):
ずっとありました。最近までずっと。

——そうなんですか!?

貫地谷:
この仕事は、気持ちを入れれば入れるほど、大事にすればするほど辛いこともあります。現場にはスタッフや出演者の方、たくさんの方の「どう撮ろうか」という気持ちが乗ってくる。自分が思っていたこととは違うこともあって、そこにうまく応えられなかったりすると落ち込みます。役を大切に思うほど上手くいかないこともある。

以前、ある作品の完成試写を観て「方向を間違えた」と感じたことがありました。でもそれが後になって、すごく褒められたりして……。のちのち良かった思い出に変わっていくこともあるのですが、「間違えた」と傷ついた瞬間があったのは事実で、そのたびに「辞めたいな」と思ってしまいます。でも、他に何かできることもないんですよ(笑)。

テレビの番宣を見て子どもが「ママ」と

——しんどい時の自分なりの処方箋はありますか?

貫地谷:
とことん落ち込むしかありません。傷ついた思いは私にしかわからないから、周りが励ましてくれても、自分がそう思えないうちはなかなか受け入れられないんです。
自分で掴み取ったものがないと浮上できない。とにかく落ちるところまで落ちて、自分で上がってくるしかありません。

ただ、先日、私が出ている番宣のテレビ番組を見た子どもが「ママ」って言って。「ママってわかるの?」と聞いたら、嬉しそうに「うん」と言ってくれました。それを見て、「もうちょっと頑張ろうかな」と思いました。

どういう心持ちで臨むかで、大きく変わる

「ずっと辞めたいと思っていた」貫地谷しほり(40)朝ドラヒロインを経ても“苦悩したワケ”
合同取材会より
——貫地谷さんは、さまざまな挑戦を続けられています。今年、ゲームソフトの「バイオハザード レクイエム」で主人公グレースの声を務めた際には、インスタグラムで、「初めての挑戦は年を重ねるごとに減っていくと思い奮起した」と書かれていました。

貫地谷:
オファーの傾向がイメージによって偏ってしまうところは、やっぱりあるんですよね。いわゆるイメージ商売でもありますし、自分自身、挑戦を狭めてしまっている部分もあると思います。気づくと、ぬるい環境にいるな、いつもと変わらない居心地のいいところにいるな、と思ったりして。

久しぶりに番宣でバラエティに出させてもらったとき、すごく緊張しました。真新しいことではないのですが、間が空くとこんなに緊張するんだと。ドキドキしましたが、ドキドキってとても大事だと思うんです。


「このままで大丈夫かな」と不安になることも…

——「ドキドキが大事」とのことですが、キャリアを積んだからこその、停滞への恐れのようなものもありますか?

貫地谷:
あります。「このままで大丈夫かな」と、漠然と不安になることもありました。経験が積み上がっていくのはどうしようもありません。若い頃は「技術なんていらない、その時の気持ちでお芝居がしたいんだ」みたいなことを言っていましたが、技術というのは、乗ってくる感情を押し上げてくれるものであって、邪魔するものじゃないと、ある時ふと思ったんです。

「ぬるい環境にいるな」となるのも、どう仕事を選ぶかということよりも、どういう心持ちで臨むかで、大きく変わるものだなとも思いました。もうちょっと違う方向に振ってみて、掘っていったらもっと面白い役になるかな、という感覚が大事なのかなと感じています。

「私自身に突き刺さった」舞台でのセリフ

「ずっと辞めたいと思っていた」貫地谷しほり(40)朝ドラヒロインを経ても“苦悩したワケ”
合同取材会より
——再挑戦も挑戦のひとつです。4年前に『頭痛肩こり樋口一葉』で樋口一葉を演じ、今回2回目ですが、今の心境を教えてください。

貫地谷:
こまつ座さんは、私が役者を始めた時から「一度はこまつ座を通った方がいい」と言われるぐらい、役者として通るべき道だと、先輩方から教えていただいてきた劇団です。そんなこまつ座さんの舞台に、4年前に初めて立たせていただいて、今回また同じ役をできるのがとても嬉しいです。日本を代表する劇作家である井上ひさしさんの偉大な戯曲を、また深掘りできるのがすごく楽しみです。

——井上ひさしさんの作品の魅力を、どんなところに感じますか?

貫地谷:
セリフにリズムがあって、耳心地がいいのに、すごくあたたかい。面白おかしいのに、すごく悲しい。悲しいことを面白おかしく描いているというか。
一葉は、生きている間に自分で戒名をつけて、「ただ自分は墨をすって書く」「心を死の世界に置いて」と言いながら、ギラギラしているんです。現実世界でもやりたいことがたくさんあって、でもそれが時代的に難しい。女性が何かを始めることが難しい時代の中でのいろんな葛藤が、長ゼリフに込められていて、私自身にも突き刺さってきます。

これからの時代、演劇が「さらに大切な役割を担う」

——現代は物事が急速に変化している時代ですが、お仕事への思いに何か変化はありますか?

貫地谷:
今ってAIが急速に普及してきていて、私自身、課金して使っています。本当に何でも相談できるんですよね。ただ、そういうものがどんどん出てきても、役者という仕事は変わらないものだと、改めて最近思っています。特に舞台は、その空間でしか味わえないエンターテインメントを届けられる仕事です。

今回の作品にしても、明治というのがどういう時代だったのか、後世に伝える役割もありますし、私自身、学校に来てくれた劇団の演劇を見て、とても楽しかったことが心に残っています。これからの時代、さらに大切な役割を担う仕事なんじゃないかと、私は思っています。

<取材・文・インタビュー写真/望月ふみ>

【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。
X(旧Twitter):@mochi_fumi
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