日常のふとした瞬間に、他人から理不尽な行為をされて嫌な思いをした経験は、多くの人があることだろう。特に、常識外れな人間からそのような行為をされた時のショックは計り知れない。

佐倉麻衣さん(仮名・26歳)もそうした経験をしたひとりだった。いま思い返してもその不可解さから、ひどく嫌な気分になる体験だったという。

電車で眠っていたら「口の中に指を突っ込まれた」26歳女性の恐...の画像はこちら >>

電車内で眠っていたら…

「当時、私は転職したばかりで、慣れない仕事への緊張感やストレスから、連日まともに眠れない日々が続いていました。そんなある日の仕事帰りに、電車のシートに座ると、すぐにうとうとと深い眠りに落ちてしまっていたんです。かなり疲れていたこともあって、無意識のうちに口が半開きになった状態のままぐっすりと眠ってしまっていて……」

そんな無防備な眠りの最中、不意に違和感に襲われた。

「口の中に異物感がして、驚いて目を覚ましたんです。そうしたら、見知らぬ中年女性の顔が至近距離にあって、私の口の中を覗き込んでいました。しかも、その女性の指が自分の口の中に突っ込まれていて……。異物の正体はそれだったんです」

突然、中年女性に罵声を浴びせられ…

指は歯茎の辺りをぐりぐりとまさぐるように動いていた。佐倉さんはパニックになりながらも、女性の指を引き抜いた。

「ショックで何も言えない状態でした。中年女性は至って平然とした感じで、こう言ったんです。『アンタの口の中、汚いねえ』って。意味がわからなくて呆然としてしまいました……」

中年女性の罵倒はそれだけでは終わらなかった。


「『歯並びも悪いし、親に矯正してもらえなかったのかね。家が貧乏だった?』とか、歯石があるとか、歯の裏が茶色いとか、歯科関係の勤務経験でもあるのか、粘着質に歯についてなじってくるんです」

満員電車ではないものの、周囲にはそれなりの数の乗客がいた。見知らぬ人物から大声で罵倒され、周囲の乗客たちから一斉に見つめられる状況は今思い返しても辛い状況だったという。

「中年女性の声や言い方も本当にキツくて。まるで何年も注意してきて、ついに我慢しきれなくなったという感じで全力で否定してくるんです。でも、もちろん知らない人なんです。初めて会った人間に指を口に突っ込まれた上に、なんでこんなことを言われるのか。意味がわからなくてただただ怖かったです」

いったい何がしたかったのか

だが、地獄の時間に変化が訪れた。

「ただ無でいようと努めていたからか、防御反応が発動したのかわかりませんが、中年女性の言葉が突然耳に入ってこなくなったんです。不思議な時間でした」

そうして、ようやく電車は目的の駅に到着した。

「粘着されて追いかけてきたらどうしようと思ったんですが、大丈夫でした。あまりにショックで、一言も言い返せませんでしたが、いまだに思い出しては悔しい気分になりますし、訳のわからなさや憤りでひどく嫌な気分になります」

中年女性には「悪いことをしている」という意識は全く感じなかったという。
歪んだ価値観で行動する人々こそ、日常で出逢う最も厄介な存在なのかもしれない。

<TEXT/和泉太郎>

【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め
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