大谷翔平が帰ってきた。ところが、ドジャースは大谷の一打を必要としなかった。

 5試合ぶりに「1番・指名打者」で復帰した大谷に快音は戻らなかったが、ドジャースはレッズに6-3で勝利。連勝を5に伸ばした。チームはこの日、わずか3安打。それでも相手の失策や四死球につけ込み、テオスカー・ヘルナンデスの3ランで突き放した。

大谷復帰も無安打…それでも勝ち切ったドジャース

「大谷が復帰したのに…」現地で“もっと休ませろ”の声噴出。5...の画像はこちら >>
 大谷が戻れば、また大谷が中心になる。誰もがそう思いたくなる復帰戦だったが、実際の試合は少し違った。

 初回の第1打席は左飛。3回には空振り三振に倒れた。5回には相手の失策で2-1と逆転し、なお2死三塁で第3打席が回ってきたが、ここでも空振り三振。復帰を待っていた本拠地で、なかなか一本が出ない。

 それでも試合は進む。ドジャースも、大谷の一打が出るまで立ち止まってはくれない。6回、フレディ・フリーマンとマックス・マンシーが四球でつなぐと、T.ヘルナンデスが3ラン。
大谷も第4打席ではフルカウントから四球を選び、この日初めて出塁したが、最終成績は3打数無安打2三振1四球だった。

 それでも、また勝った。この「また」という部分が、今回の復帰戦ではやけに大きく見える。

大谷が欠場した4試合すべてに勝利したドジャースの「圧倒的なチーム力」

 欠場直前のカージナルス戦で、大谷は4打数無安打4三振。スイング後に右腕を気にするような仕草も見せていた。その後、左膝や右上腕二頭筋、首の状態を考慮して4試合連続で欠場。ドジャース移籍後では最長となった。

 デーブ・ロバーツ監督も負傷者リスト入りを検討するなど、かなり慎重だった。5試合ぶりの復帰が決まったこの日の試合前にも、4日間の休養と投球を控えたことがプラスになるとの見方を示し、今後も状態を日々確認していく考えを明かしている。打席に戻ったからといって、「もう大丈夫」と片づけられる状態ではない。

 そして、大谷が欠場した4試合、ドジャースはすべて勝った。初戦ではT.ヘルナンデスが9回に逆転サヨナラ二塁打。翌日はブレイク・スネルが6回無失点と試合をつくり、3戦目は大谷に代わって1番に入ったトミー・エドマンが逆転3ランを放った。
4戦目はムーキー・ベッツが8回に逆転3ラン。勝つたびに前へ出る顔が変わった。

 大谷の代わりになる選手が現れたわけではない。そんな選手が簡単に見つかるなら、大谷はここまで特別な存在にはなっていない。エドマンが1番を務め、T.ヘルナンデスやベッツが勝負どころで打ち、投手陣が試合をつくる。大谷一人分の穴を誰か一人に押しつけるのではなく、何人かで少しずつ埋めていった。

「10月のために休ませても」…大谷不在で生まれた現地の声

 結果として、4試合とも勝った。すると現地では、少し前なら意外に聞こえたかもしれない声も出てきた。

 プレーオフを見据えてもっと休ませてもいい。負傷者リストに入れて、しっかり治した方がいい。そんな意見である。大谷を見たくないからではない。むしろ10月に大谷を見たいから、今は無理をしなくていい。
本人の状態が気になる一方で、チームは大谷なしでも勝ち続けていた。

 復帰戦で第3打席まで快音がないと、まだ万全ではないのではないかと心配する声や、エドマンを1番に戻してはどうかという意見も出た。10月を考えれば、もう少し休ませてもよかったのではないかという反応もあった。

 ただ、第4打席で四球を選ぶと、最後の打席の内容を評価する声も出ている。安打が出たかどうかだけではない。スイングはどうか。ボール球を追っていないか。大谷が戻ってきたことで、今度は1打席ごとの中身まで気にされるようになった。

復帰を喜ぶ日本と、さらなる休養を求める現地の温度差

 一方、日本では復帰そのものを喜ぶ声や、連勝が止まらなかったことに安堵する反応、無安打でも次戦に期待する声が目立った。第4打席の四球にも、まずはほっとしたという空気があった。

 もちろん、日本でも「1番はエドマンでいいのでは」と打順を疑問視する意見はある。現地にも大谷の復帰を歓迎するファンはいる。それでも今回見ていて印象に残ったのは、現地では「10月のためにもっと休ませてもいい」という声が、日本では「まず戻ってきてくれてよかった」という声が、それぞれ目立ったことだった。


 これは「大谷はいらない」という話とは、まるで違う。必要な選手だからこそ、今どこまで使うのか。毎試合出場させるのか。1番で使い続けるのか。それとも10月に照準を合わせ、休養を挟みながら戻していくのか。

問われるのは10月へ向けた大谷の起用法

 大谷が欠場した4試合では、エドマンやT.ヘルナンデス、ベッツらが勝利に貢献した。そして復帰戦でも、大谷が無安打のままチームは勝った。一方で、大谷自身にはまだ複数の不安があり、球団も慎重に状態を見ている。

 だから問われているのは、大谷が必要かどうかではない。大谷をどう使うのが、今のドジャースにとって一番いいのか。大谷不在の4日間で、大谷の価値が下がったわけではない。むしろ、大谷を無理に急がせなくても勝てることがわかった。


 シーズンは残り3週間弱。10月まで、大谷を待てる。いまのドジャースには、その余裕がある。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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