今夏にFIFAワールドカップ2026を戦ったサッカー日本代表が、次大会に向けて再始動した。
 とはいえ、来年1月に開催されるアジアカップまで森保一監督の続投となったため、中心となったメンバーはワールドカップ時と大きく変わることはなく、目新しさを感じることもなかった。
4年後のワールドカップに向けての発掘というより、アジアカップに向けた強化と目の前の試合での勝利にこだわり優先したのだろう。

 それでも招集したメンバーの大半が出場機会を得たり、新たに4バックのシステムを試したりと興味深い見どころはあった。

サッカー日本代表がアジアカップに向け必要なのは「上田綺世のオ...の画像はこちら >>

主軸と新戦力候補の実力差が浮き彫りに

 今回は2週間ほど活動期間でウルグアイ、ベネズエラ、エクアドル、ニュージーランドと対戦し、いずれの試合も勝利を収めた。親善試合、強化試合という理由で新戦力の発掘などを優先せずに、目の前の勝利にこだわるスタイルを貫く森保監督は、今回もひとつの勝利にこだわった。その結果、主力、コアメンバーといわれる選手のほうが出場機会が多くなった。同時に、従来の主軸を担う選手らは勝利に導く働きをして、新戦力候補の選手らとの差をきっちりと見せつけた。

 当初は新戦力の発掘を目的として新たな招集メンバーにもっと出場機会が与えられることも予想されたが、先述のとおり目の前の一戦での勝利とアジアカップに向けた強化を優先させたことにより期待を上回るほど起用はされなかった。しかし、森保監督の立場を考慮すれば至極当然のことだと思われる。森保監督は3カ月後に控えるアジアカップでの優勝を義務付けられ続投したわけで、根本的に4年後を見据える義務はない。よって、現状で最高と思える主力をわざわざ変える必要はない。

あと3カ月で溶け込むのは難しいか

 たとえ4年後を見据えたとしても現有の主力選手の超えるレベルに達しなければ起用には値しない。その基準で今回の新戦力といわれる選手を見ると、まだまだと感じる部分が多かったことは否めない。

 多少フォローをするなら、技術的というより戦術的な要因が大きいように感じられる。主力といわれるメンバーは長い期間一緒に活動していたこともあり、複数人のグループによる連動性やチームとしての意思統一を行いやすい状態になっている。
しかし、新戦力といわれる選手たちは個人がアピールしたい気持ちが逸ったのか、グループとしてチームとしての意図がずれチャンスを失したり、ピンチを招いたりする場面が多かった。

 これは時間と機会があれば解決するが、それでもあと3カ月間という森保監督の続投期間を踏まえると、3カ月後に現在の主力を飛び越えてくるような才能にはまだ出会えていないというのが本音だろう。

上田綺世のオプション探しは急務

 森保監督がアジアカップに向けて新たな戦力を欲しているであろうポジションは2つある。

 ひとつはトップをはれるFWだ。今や押しも押されもせぬエースとなった上田綺世がいるが、森保監督は試合後の会見でも明かしたように、そのオプションとなる選手を探している。たしかに他のポジションでは高水準の選手が複数人候補にいるが、トップは今のところ上田綺世しか見当たらない。候補はいるものの、まだ少しもの足りなく感じるのが現状だ。

サイドバックは最も枯渇しているポジション

 そして、もうひとつはサイドバックだ。今回のシリーズ4試合目のニュージーランド戦で4バックのシステムを採用した。実際に守備に人数を割いて1トップでカウンターを狙ってくるようなチームに、センターバックは3人も必要ない。アジアの大半のチームが日本と戦うときに、そのような戦術を採用してくることを想定すると、4バックのシステムに基づいた戦い方もオプションとして持っておきたいという監督の心情は十分に理解できる。

 そのうえ、サイドハーフとして出場した堂安律や中村敬斗が元来の攻撃力を発揮して躍動した。それらを踏まえると、アジアカップでは4バックで戦うことには賛同したい。しかし、現状においては人材不足といわざるを得ない。
ニュージーランド戦では中野就斗と鈴木淳之介がサイドバックとして先発。その後、伊東純也と伊藤洋輝が務めた。相手のサイドアタッカーとデュエルするような守備的な役割を求められる機会はさほどなかったため、攻撃面での役割が目立つ試合になったが、インパクトを残したのは伊東純也だけとなった。

 そもそも、現代の4バックシステムにおいて、サイドバックの役割は多岐にわたる。相手のキーマンといえるような選手はサイドに配置されることが多く、そういった選手たちにデュエルで勝てる守備力がベースにあったうえで、サイドを打開できる突破力や推進力、クロスなどでチャンスメイクする能力、縦パスやサイドチェンジなどを展開するゲームメイク能力など、おそらく最も多くの能力を持ち、それを状況に応じて適した役割をこなすロールプレーイングの能力を求められる。世界中を見渡してもそれを行えるのは希少種で、現状は最も枯渇しているポジションといえる。

 日本はかつてサイドバック大国といわれたこともあり、長友佑都をはじめ内田篤人、酒井宏樹、酒井高徳など世界でも活躍する選手を多く有していた。その頃よりも求められる役割は多く難しくなったポジションではあるが、よきお手本はいたので新たな才能が芽生えてくることを願いたいところだ。候補としては菅原由勢、伊藤洋輝、橋岡大樹あたりになり、そこに冨安健洋も入れたい。そして、中野就斗ら国内組の急成長も期待したい。

フルメンバーの日本代表が見たい

 2つのポジションをピックアップしたが、主力といわれるメンバーを飛び越えてくるような才能は、森保監督に限らずファンやサポーターも大歓迎だろう。

 招集されたメンバーはそれぞれの所属クラブに帰り、自身の才能を磨きあげるため各々の戦いに戻った。
そんななか南野拓実が復帰した朗報も届いた。順調であれば三笘薫や冨安健洋も近いうちに復帰することだろう。ワールドカップでは負傷者に悩まされる一面はあったが、実力者が出そろってくれることを切に願う。

“見たいと思える選手”がさらに多く現れてくれることを楽しみにしながら、各選手のクラブチームでの戦いを注視していきたい。

<TEXT/川原宏樹 撮影/松岡健三郎>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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