嫌がらせしてきた相手をSNSで晒す人が増えている。さらにその恨みつらみを呪術で発散するというケースまで……。
一方で「復讐モノ」の漫画やドラマは日本中でヒットコンテンツになり、今や「復讐ブーム」とも言える現象が起こっているのだ。なぜ人は復讐するのか。復讐心にのまれた当事者たちを追った。

“身近な怨み”を描いて大ヒット

「人を呪わば穴二つ」累計750万部超の『怨み屋本舗』作者が明...の画像はこちら >>
怨みを晴らし続けて26年、謎の女が多額の報酬で復讐を請け負う『怨み屋本舗』は復讐系コンテンツの代表格と言っていいだろう。コミック累計発行部数750万部超、通算100巻のメガヒット漫画だ。

「復讐というより、人が抱く怨みの感情そのものに興味があったんです」

作者・栗原正尚氏は、制作の裏側を次のように語る。

「’00年の連載開始当時は、“癒やし系漫画”が全盛。『人が描いていないテーマを』と描き始めたのがきっかけです。初期は犯罪組織などの巨悪は扱わず、描くのは詐欺やDV、少年犯罪といった“身近な怨み”と決めていましたね」

描いていて最もツラかったのは…

怨みが生まれる過程をつぶさに描くからこそ読者は共感し、復讐が果たされた瞬間に大きなカタルシスを得るのだろう。

「夫が買ってきた掲載誌を妻が読んで、『スッキリしました』とはがきを送ってくれた読者もいます。ビジネスジャンプ全体の女性票の25%を本作が占めたこともありました」

26年間の連載のうち、描いていて最もツラかったのは、少年犯罪で家族を失った被害者の回だという。

「被害者からすれば、加害者が何歳だろうと家族を失った事実は変わらない。けれど今の法律では、成人に比べて少年犯罪の量刑は軽くなりがち。法の不公平さには、常々疑問を感じていますが、そんな法が裁けない悪事に制裁を下す“必要悪”が『怨み屋』です」

怨みには大きく2種類ある

「人を呪わば穴二つ」累計750万部超の『怨み屋本舗』作者が明かす「怨みやすい人」の特徴
静かに広まる[復讐ブーム]の恐怖
栗原氏曰く、怨みには大きく2種類ある。

「理不尽な被害に遭った人の怨みと、他責思考の逆怨み。
前者は読者の共感も得やすいですし、中には復讐を果たさないと次のステージに進めない人も一定数いると思います。逆に後者は共感されず、最後は自滅することが多いですね」

同じ不運な出来事でも、怨む人と怨まない人がいる。

「『自分は正しい』と思い込み、被害者意識が強い人は、怨みを溜め込みやすい。逆にそういう人に怨まれないためには自分に非があれば素直に謝ることですね」

「今は顔の見えない相手への怨嗟がネットに溢れている」

令和は怨みの形も変わったと栗原氏は話す。

「かつては怨む人と怨みの対象は、顔見知りが主でした。けど、今は顔の見えない相手への怨嗟がネットに溢れている。また昔は新聞の人生相談に怨みつらみを書くうちに冷静になることもありましたが、今は怨んだ瞬間に投稿・拡散できる。感情の発露と出力が直結している時代だから、怨みが可視化されやすいのかも。怨んでいた相手にリアルに対面したら何もしない“ネット弁慶”も多いのかもしれませんが」

復讐ブームといわれる昨今、最後に栗原氏はこう釘を刺す。

「人を呪わば穴二つ。本作を読んで『よし、俺も復讐してやろう』と思うのは、やめたほうがいいですね(苦笑)」

怨みを抱えながらも復讐はせず、漫画で憂さを晴らす。『怨み屋本舗』が愛され続けているのは、社会が健全に保たれている証しかもしれない。


※2026年11月4日号より

取材・文/週刊SPA!編集部

―[静かに広まる[復讐ブーム]の恐怖]―
編集部おすすめ