三冠達成を期待されたロブチェンが、まさかの14着。10月25日の菊花賞は、断然の1番人気が出遅れて敗れる一方、武豊騎手のゴーイントゥスカイがハナ差の激闘を制した。

 ゴーイントゥスカイと武騎手は道中しっかり脚をため、直線で進路が開くと鋭く抜け出した。最後は外から迫るバステールを振り切って、鞍上は歴代最多の菊花賞6勝目。三冠馬の誕生とはならなかったが、名手の手綱さばきにうなったファンも多かったはずだ。

 ところが、その陰で物議を醸したのが、2着バステールに騎乗した川田将雅騎手の進路取りだった。勝負どころの4コーナーで外側に斜行し、レース後に過怠金5万円の制裁を受けたのである。

「斜行タックル」と批判も…ダービーに続き津村騎手の馬が被害に

菊花賞で「やったもん勝ち」「笑ってる場合か」の声…川田将雅騎...の画像はこちら >>
 問題の場面で川田騎手は、後方から追走していたバステールの進路を外へ求めた。その外にいたのが、津村明秀騎手のアウダーシア。馬同士が接近した直後、アウダーシアは弾き飛ばされるように外へ膨れた。

 直線を向く手前で、横へ振られる形となったアウダーシア。映像を見て、川田騎手の騎乗が強引すぎると感じたファンがいたのも無理はない。Xには「斜行タックル」という言葉とともに、厳しい声が寄せられた。

「これはほんとにやめて欲しかったっす」
「バステール乗ってる時の川田危なくないか?」

 一方、同じ場面を見て、アウダーシアの動きを指摘する声もあった。「アウダーシアが内に突っ込んできてる」「いやこれに関しちゃ外から塞いだ津村も悪いよ」と、外へ出ようとする川田騎手を擁護する意見だ。


 ただ、JRAの裁決ではアウダーシアが被害馬とされ、川田騎手に制裁が科された。9着に敗れたアウダーシアの津村騎手は、外々を回って苦しくなったとレース後に振り返っている。

 川田騎手への批判が集まった背景には、春の日本ダービーの記憶もあるだろう。約5か月前にもバステールに騎乗した川田騎手は最後の直線で内側に斜行し、過怠金3万円を科されていた。しかも、被害を受けたリアライズシリウスに乗っていたのも、津村騎手だった。

「ごめーん津村」川田騎手の説明にも賛否

 川田騎手はダービー後、JRA公式YouTubeの「勝浦正樹が聞く! 勝負の裏側」で、津村騎手に謝罪したことを明かしていた。それだけに、ファンからは「また津村」という声も出た。

 そして今回も川田騎手は、同シリーズの菊花賞編で当時の判断を説明。ロブチェンが動くと考えてその後ろに入ったものの、同馬が進まなくなり、スペースがなくなったという。

 さらに、「何よりまず、今回もまた津村に謝らなきゃいけない」と述べ、レースの真っ最中、4コーナーで「ごめーん津村」と声をかけていたことも明かした。動画には自ら状況を説明した姿勢を評価する声がある一方、Xでは「笑ってる場合か」と話しぶりに反発するファンの声も見られた。

直線では川田騎手も不利を受ける側に…

 この4コーナーの接触とは別に、最後の直線ではロブチェンが挟まれて下がる場面もあった。ここでも川田騎手を批判する声が出ていたが、内側への斜行で戒告を受けたのは、ショウナンハヤナミの池添謙一騎手。被害馬として名前が挙がったのは、ロブチェンとバステールだった。


 つまり、川田騎手の馬も、直線では不利を受ける側になっていたわけだ。4コーナーの斜行と直線の不利が入り交じる形で、川田騎手への批判につながっていた可能性もある。

 また、3着ダノンヒストリーに騎乗したC.ルメール騎手も、最後の直線で外側に斜行し、過怠金1万円を科されている。

騎手の取り分400万円に対し過怠金5万円

 SNSなどでは過怠金の額への不満も目立った。「やったもん勝ち」「いい加減にこの少なすぎる制裁金を見直しませんかね」といった声である。

 こうした不満は、菊花賞で始まったわけではない。春のダービーでも、川田騎手への過怠金3万円と獲得賞金のバランスを疑問視する声が出ていた。

 川田騎手の説明からは、想定した進路が開かない中で判断を迫られた事情がうかがえる。報酬と過怠金を天秤にかけて乗ったと決めつけることはできないが、制裁が十分な歯止めになっているかは、別に考える必要があるのではないか。

 バステールの2着本賞金は8000万円。平地競走では通常、その5%が騎手の取り分となるため、本賞金分では400万円となる。これに対し、川田騎手に科された過怠金は5万円だった。

 金額の比較だけで制裁の妥当性が決まるわけではない。
それでも、他馬に不利を与えた騎乗への過怠金が報酬のごく一部にとどまることは、ファンが処分の抑止力に疑問を抱く一因だろう。

一瞬の判断が人馬の命に関わる競馬…次の危険を防ぐ制裁とは

 馬群をさばき、わずかな進路を見つけて勝ちに行く。競馬の面白さには、そんな騎手の判断もある。

 しかし、一瞬の判断が落馬や大けがにつながり、人馬の命に関わることもあるのが競馬だ。勝利を目指す騎手に、危険な騎乗を思いとどまらせるだけの歯止めがあるのか。制裁には、起きたことを罰するだけでなく、次の危険を防ぐ役割も求められる。

文/中川大河

【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。
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