●読書好きな彼女、その素顔
――撮影の振り返りからお聞きしたいんですけども、今回は「読書の秋、文学少女」というテーマでした。矢田さんは読書がお好きなんですよね。矢田萌華(以下、矢田):はい。学生の頃は勉強も兼ねて新書なども読んでいたんですけど、基本的にはノンフィクションよりは物語に没入できる作品が好きで、入り口になったのが、あさのあつこ先生の『NO.6』という作品で、ミステリー小説も結構ハマりました。
――ミステリーは考察しながら読むのが面白い?
矢田:そうですね。最後にどんでん返しとかあると、作者に踊らされている感じがあって、そういうのが好きなんです。「もう絶対にこの人が犯人だろうな」って考察しながら読み進めていくんですけど、犯人の予想はほとんど間違っています(笑)。
――もし小説を書くとしたら、どういう題材でどんな内容で書きますか。
矢田:私は本がすごく好きだったので、図書館に入り浸っていた時期もあって。そういう時にスマホは触りつつも、そういう現実の世界から離れたかったりするときは、自分で小説を書いたりしていました。けど、人に見せることのない、自分だけの小説だったから、今日あったことを膨らませて書いてみたり。自分が体験したことをちょっと大げさに書くとか、そこに架空のストーリーも入れてみてファンタジー風に書いてみるっていうのが本当に好きです。
――どういう体験を小説にしたことがあるんですか。
矢田:学校であった些細なことや、家でボーっとしているときに外の風景や話している人たちを見て、こういう会話をしているのかなとか。見たままのことを書いてから、そこに肉付けして物語を作っていくのが好きでした。
――それでいうと、こういうテーマのある撮影とか妄想を膨らませることもあったり?
矢田:グラビアの撮影はまだ慣れないんですが、コンセプトを聞いて、その物語の人物になって、勝手にストーリーを膨らませて入り込んだりしています。あと、カメラマンさんと向き合っている時間も好きで、レンズを通して見られている感じが楽しいんです。撮影以外の時は街中でも影の方で歩いていきたいんですけど、撮影の時は見てって思っちゃいます。
――今日は文学少女をしっかり演じられましたか。
矢田:緊張していたんですが、頑張りました! 私、普段はすごいお喋りなんです。
――十分喋ってもらってます(笑)。
矢田:6期生は乃木坂46に入って2年目なので、カメラマンさんも編集部の方も初対面の現場が多いので、世界にはいろんな人がいるんだなって思っていて。
●秋田から東京へ――アイドルを選んで
矢田:そうですね、東北地方はそうかもしれない。東京だと電車の中で知らない人と話さないじゃないですか。でも秋田だと普通に話すんです。スーパーで試食していたら、知らないおばあちゃんが来て「それは季節のものでおいしいからおすすめよ」って教えてくれたりとか、迷子になっていたら「どこさ行きたいの?」って聞いて案内してくれたり。そういう環境が普通だったので、東京に来たばかりのときは人との距離の保ち方みたいなのが最初わからなくて、結構ズカズカいってしまっていました(苦笑)
――環境がガラッと変わりましたよね。
矢田:東京は異世界だなって思いました(笑)。乃木坂46の先輩方は芯があって、もの静かな方が多いので、最初はわからずに結構いってしまって。だけど、今はいい塩梅の距離での接し方を学びました。
――加入前は医学部を目指していたということで勉強に力を入れていたと思うんですけど、アイドルは好きだったんですか?
矢田:好きでした。
――ちなみにそのときに披露した曲は?
矢田:『ガールズルール』『裸足でSummer』『帰り道は遠回りしたくなる』『17分間』だったと思います。それに加えて、ほかの坂道の曲も披露していて、文化祭のステージは2日間あったんですが、セットリストを全部変えて全15曲の振りを覚えました。ダンス部でフォーメーションを考えてくれる先輩がいたんですけど、集団のなかで自分がどう立ち回るのか、限られた時間のなかで責任を持って最後までやりきること、乃木坂46に加入したばかりのときは苦しかったですが、高校生時代のこの経験がなかったらもっと苦労していたと思います。
――それでも今の自分がアイドルを目指せるのかという思いもあった。そのときに乃木坂46と東京藝術大学の学生という二足の草鞋を履く5期生の先輩・池田瑛紗さんの存在に背中を押された部分が大きかった。
矢田:そうですね。私は小学生の頃から両親は「良い中学校に行って、良い高校に行って、良い大学に行って、立派な大人になりなさい」という教えだったので、それが当たり前で正しい人生だと思っていたんです。あとは、幼少期にアレルギーとか喘息がひどくて、お医者さんに「大丈夫だよ。治るから一緒に頑張ろうね」って言ってもらえたことが心の支えでしたし、医療従事者の方の素晴らしさっていうのは身に染みて感じていたんです。
――両親には相談できたんですか。
矢田:言えなかったです。医学部を目指すために塾にも通わせてくれて、応援してくれていたので。実は乃木坂46のオーディションに申し込んでから親に打ち明けたんです。そういうときに、池田瑛紗さんのブログを見て惹きこまれたんです。私たちが見ていて楽しいブログを書いてくれるし、活動のなかで得た感情を私たちと共有しようとしてくれるっていうのが本当に伝わってきて。応援したいって思うアイドルってこういう感じなんだなって思ったんです。なによりも、乃木坂46の活動をしながら東京藝大に通っている姿を見て、私もどちらの夢も諦めなくていいのかもしれないとオーディションに応募する決心ができました。
――ということは、今も医者になる夢は諦めたわけではない?
矢田:いずれ乃木坂46を卒業する時がきて、医者に対する心の火が燃え尽きていなかったら目指したいな思っています。
●仲間と先輩の支え。次のステージへ
矢田:今は本当に恵まれた環境で忙しくさせていただいて頑張っていますが、やりたいことに向かって努力できる人になりたいっていうのはずっとあって。それが私の理想像というか、そういう自分でありたいです。
――お披露目ライブや新参者など同期だけで乗り越えてきたこと、初めての6期生楽曲「タイムリミット片想い」ではセンターにも抜擢されましたね。今、振り返るとどんな記憶でしょうか。
矢田:とにかく気合いで戦ってきました。メンタルが特別に強いわけでもなく、運動神経もよくないし、突出した才能を今でも見出せないでいるんです。まだ成長したい、もっと頑張りたいっていう気持ちがあるから、ガッツだけはあると思います。期待に応えたいって気持ちや、任されたからにはなよなよしていられないとか、自分に任された責務を全力で全うしたいっていう気持ちが強いんです。『タイムリミット片想い』でセンターを任された時も、もちろん不安でした。「なんで私なんだ」って何度も考えましたが、「考えるのは今じゃない。それより周りが不安にならないような背中を見せるべきだ」と思って乗り切っていました。
――あまり泣いてるところは見られたくないそうですね。
矢田:そうなんです(笑)。私が長女だからなのか、人に弱みを見せるのが本当に苦手というか。忙しくてもなかなか音を上げない人間だと思っているんですけど、誰かに迷惑をかけてしまったり、やり切れなかった自分に対する悔しさから家で泣いてしまうことがあるんです。なので、毎日のようにひとり反省会をしています。
――どんなことを反省してしまう?
矢田:今日みたいな表紙の撮影で大丈夫だったかなとか、あのときはああいう言い方をしたほうがよかったなとか。ただ反省して終わるだけだとストレスを抱えるだけなので、次にどう生かせるのかって、ポジティブに変換しながら毎日を乗り切っています。
――同期のなかでも瀬戸口心月さんにはそういう胸の内を話せるのは、40枚目シングルの『ビリヤニ』でWセンターを務めたことも大きい?
矢田:そうですね。私は相手の出方を見ちゃうというか、人からの目線が気になるんです。メンバーが落ち込んでいる時に声をかけたりもするんですけど、自分のことになると深いところに踏み込めなかったりするんですよね。心を許したと思っていても、相手が同じ思いじゃなかった時に悲しいから、私は自分で防衛線を張ってしまうんです。ちょっと面倒くさいですね(笑)
――瀬戸口さんは違った?
矢田:瀬戸口は『ビリヤニ』で一緒にセンター務めた時にずっと一緒にいてくれて、隣で戦ってくれる仲間みたいな意識も芽生えたし、彼女も「萌華は同期で同志だけど、家族みたいに素を出して話せるから楽なんだよね」って言ってくれていて。それを聞いて、じゃあもっと近づいてみようかなっていう気持ちになって踏み入ることができたので、そういう部分ではすごく心の面で支えられました。
――先輩との距離感で悩まれた時期もあったというお話もされていましたけど、41枚目シングル『最後に階段を駆け上がったのはいつだ?』はアンダーとして活動をして、また違う先輩との関わりができたことで関係性は変わりましたか。
矢田:先輩たちと一緒にリハーサルして1つのライブを作ることは楽しかったですが、その一方で、パフォーマンスのレベルの差がわかりやすく出ちゃうから、いつも以上に自分と周りを比べてしまうようになるんです。それでいろいろ考え始めて苦しかったこともありました。ある日、先輩がマネージャーさんに「萌華は『自分はこうやってしっかりしなきゃ』って思ってくれているけど、まだまだ周りに甘える妹で居させてあげてください」って言ってくれた言葉を聞いて、気づいたら涙が溢れていて。そういう感情にも気づいていなかったけど、泣いている私を「大丈夫、大丈夫」って言いながら抱きしめてくれた先輩たちの温かさは今でも苦しくなったときに思い出すようにしています。
――そういう経験を経て臨んだ「真夏の全国ツアー2026」は、また違ったものになりましたか。
矢田:去年とは違う自分を見せたい気持ちは強かったですね。1年目は振りを覚えるのに精一杯でお客さんの顔をなかなか見れなかったんですけど、2年目はファンの方からもらっているものを成長した姿で応えたいし、「萌華はここを頑張ってた」って言ってもらえることを1つでも見つけてもらえるツアーにしたいと思っていました。毎公演で小さな目標を立てて、レベルアップできたなと感じています。
――真夏の全国ツアー2026の最終地、明治神宮野球場では活動休止していた増田三莉音さんが復帰して久しぶりに6期生の11人が揃いましたね。6期生の全国ツアーもわかってたなかでのパフォーマンスは特別な思いもありましたか。
矢田:実は6期生の全国ツアーの開催を知ったのが数日前だったんです。青葉坂46が結成されることもツアー中に聞いて、楽しみと不安と焦りの感情が入り混じっていて。後輩ができたときに、先輩として見せられる背中がまだないぞと思って。私は先輩方からたくさん支えてもらって愛をもらっていますが、私は後輩のために何が与えられるのか。6期生の全国ツアーでは自分の強みを見つけたいです。自分の良さや個性を認めてあげられたら、後輩にも与えられるものがあると思うし、7期生のことを後輩として可愛がって、私たちが先輩にしてもらったようなことをできる気がするので。
――深く踏み込めないとか、1人でいるのが好きとか、そういうことは後輩ができることで自分も変わらないといけない部分がある。
矢田:やっぱり長女なので、後輩になるのが苦手で(笑)。生意気な感じになってしまうんです。なので、同じような子がいたら話を聞いて助けたい。話を聞いてもらうだけでも心が楽になることを知っているから、そういう先輩になれたらいいなと思っています。
――まだまだ身長も伸ばしたいんですよね(笑)?
矢田:そうなんです。日光浴して背伸びしています(笑)。
――今の161㎝でも低くない気がするんですけど、あと5㎝ほしい理由は?
矢田:遠藤さくらさんや金川紗耶さんを見ていて、乃木坂46らしい憧れのお姉さんになりたいなって。雑誌撮影が好きなので、着こなせる衣装やポーズも増やしたい。もうここから縮むことはできないので伸ばす方向に。
――今のところ効果は?
矢田:それがちょっとずつ伸びているんですよ! 私、巻き肩の猫背なので整体でやってもらったほうが伸びそうな気がします。お母さんが165センチ以上あるので可能性はあります!
――個人で挑戦したいことはありますか。
矢田:お芝居です。MVや撮影など何かにストーリー性を見出して表現するのが好きで、それを一番活かせるのはお芝居なんじゃないかって思っているので、お芝居はやってみたいです。
――好きな女優さんはいますか。
矢田:戸田恵梨香さんです。作品によって佇まいも表情もすべて違って魅力的なので、そういうところに憧れています。
取材・文/吉岡 俊 撮影/東 京祐
―[乃木坂46]―
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