宝塚歌劇団の元雪組トップスター・水夏希は、2010年に卒業して15年になる。5月9~11日にはリーディングの舞台「銀河鉄道の夜」(東京・池袋あうるすぽっと)が控える。

宮沢賢治の名作で先生をはじめ、登場する13役の語り手を務める。

 「以前から、落語のような一人で何役も演じ分けるようなお仕事に関心があり、どんな形でもやってみたいと思っていた」と話す。ジョバンニは元花組スター・飛龍つかさ、カムパネルラには元月組スター・宇月颯(はやて)と、共演はともに宝塚の後輩。「初めて一緒の舞台ですが、宝塚出身同士というだけですぐ打ち解けられるはず。楽しみですね」

 退団から15年。「培ったものが形状記憶のように残っている部分も」と、いまも男役の依頼があれば、すぐに変われる。舞台を中心にコンスタントに芸能活動を続けてきた。「目まぐるしく過ぎた在団中は目の前のことに打ち込むので精いっぱいで」と振り返る。「卒業してダンスや発声などすべての面を基礎からやり直しました。その中にも初めて知る驚き、喜びもあって」。宝塚時代は月、花、宙、雪と組替えを経験。人一倍、自身を客観視できる感覚が身についたのだろう。

女優を長く続けるには、自分の“つくり直し”が不可欠と冷静に考えることができた。

 6月には「タンゴのある人生」(ビルボードライブ大阪で15日、ビルボードライブ横浜で22日)と題したライブも行う。「とことん踊る機会は、そうないので自分でつくろうと」。男役時代は力感とキレを併せ持った、この人ならではのダンスの表現力があった。どう変化したのか見るのもおもしろいかもしれない。(内野 小百美)

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