◆歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」(27日千秋楽)

 新・菊五郎が誕生した。5、6月は8代目尾上菊五郎、6代目菊之助の襲名披露興行。

8代目は立役、女形も一流の“兼ねる役者”である。今月はその本領を発揮している。

 披露狂言の立役は、まず昼の部「勧進帳」の富樫。弁慶は市川團十郎。この共演は昨年2月・御園座以来で、團十郎の13代目襲名興行だった。菊五郎は懇願して出演を依頼したという。

 富樫が登場した。「8代目!」。大向こうの掛け声が霞(かす)むほど盛大極まる凄(すご)い拍手。番卒に「方々!」と、高い調子のセリフの覚悟は目力の強さを見れば分かる。読み上げで弁慶に迫る姿、詰め寄りは両者の火花が散るような迫力だった。

 「京鹿子娘道成寺」は菊五郎、菊之助、坂東玉三郎の3人花子。

女形最高の舞踊だ。菊五郎親子が花道スッポンからセリ上がり「道成寺へと着きにけり」で3人並んで舞台中央からセリ上がった。美形がそろって場内の空気が一変。菊五郎は恋の手習いで魅(み)せた。振り向いた顔の色気、切なさ、少女のあどけなさも出た。当代一の玉三郎を追う女形の第一人者である。

 夜は「口上」から。“伝統と革新”をあいさつで約束。「弁天娘女男白浪」の弁天小僧は、男とバレて見せた顔付きは目をギョロリと睨(にら)んで「真っぴらごめんなせえ」が世話物のセリフ。華のある立役なのである。

 菊五郎に期待する。数少ない二刀流の兼ねる役者として家の芸に革新を起こしてほしいのである。

(演劇ジャーナリスト)

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