俳優の武田航平(39)と三浦貴大(39)のダブル主演による今秋公開映画「やがて海になる」(沖正人監督)の特報予告が21日までに完成、舞台となる広島での先行上映が8月29日に正式決定した。瀬戸内海のロケーションで撮影された場面写真も解禁。

5月4~6日に行われた「第3回横浜国際映画祭」出品作品で注目されたヒューマンストーリーは10月の全国公開までに話題を集めそうだ。

 風光明媚(めいび)な風景がスクリーンいっぱいに広がる。撮影は広島県の西部、瀬戸内海の島嶼(とうしょ)部に位置する江田島市と、橋で本州と結ばれた呉市でほぼ行われた。沖監督の生まれ故郷と青春時代を過ごした地で、自身の実人生を投影しながら脚本も映画「みんな笑え」の鈴木太一監督と共同で書き上げた。

 出品された「第3回横浜国際映画祭」ではチケット発売初日にソールドアウト、上映館前に長蛇の列ができるほど注目を集めた作品。沖監督は製作について「広島で生まれ育った私にとって、地元が映画で取り上げられるのはうれしいことですが、任侠(にんきょう)や戦争ばかりが題材となることに、もどかしさを感じてきました。だからこそ、これまで誰も観たことのない“最高純度の広島映画”を撮ろうと決意しました」と説明。

 今回の情報解禁にあたり、さらに「亡くなった母への想いや地元への深い敬意も込めています。広島だけでなく全国や海外に届く作品を、という目標も掲げており、横浜国際映画祭に選ばれたことで一歩踏み出せたと感じています」とスポーツ報知にコメントを寄せた。

 ストーリーは、島から出ずにうだつの上がらない日々を過ごす男(三浦貴大)と、島から東京に出て映画監督になった幼なじみ(武田航平)、不倫から抜け出せず島を行ったり来たりする、2人がかつて思いを寄せた女(咲妃みゆ)を中心に進む。過ぎた青春を心の隅にしまっていた3人が島での映画撮影を機に再会、悩みながら生き、揺れ動く心の機微を、美しい海と街の風景、静かな旋律とともに描いている。故郷を舞台にした人生のロードムービーでもある。

 解禁となったビジュアルには、抑えた演技で感情の動きを繊細に表現した武田の表情や、もどかしく生きながらも存在感を示す三浦、元宝塚劇団雪組トップ娘役だった咲妃の心が洗われるような透明な横顔などが収められている。ダブル主演の武田も「この映画は『あの時』には気づけなかった故郷の清らかさ、尊さ、儚(はかな)さ、無形の財産と向き合える作品です」とメッセージ。「この作品での多くの出会いは私にとっての宝物」と三浦。咲妃も「故郷を想う沖監督の大きな愛とスタッフの方々や共演者の方々の熱意が強く結びついた先に、人や自然の尊さを感じられる素敵な映画が誕生したことを幸せに思います」とコメントを寄せた。

 3人の高校時代を後藤陽向、市村優汰、川口真奈が演じるほか、ドロンズ石本、高山璃子、緒形敦、白川和子、大谷亮介、渡辺哲ら個性豊かな面々が脇を固めた。広島・八丁座での8月29日先行上映の後、9月5日から呉ポポロシアター、10月にはヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次公開される。

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