◆第92回日本ダービー・G1(6月1日、東京競馬場・芝2400メートル、良)

 一枚の絵画が原点だった。3度目の騎乗でダービージョッキーとなった北村友。

美しい騎乗姿勢と、きちんと折り合いをつける技術は、多くの競馬関係者から信頼を集めている。少し前に、理想のジョッキー像を聞いたことがある。すると「(デビュー時に所属の)田島良保厩舎に絵が飾ってあったんです。描いてある騎手のフォームが、ずっと頭にあります。デビューしてから今まで、理想のジョッキー像は変わらないですね」と答えた。

 暴れる馬を、涼しい顔で乗りこなしているように見えるその絵のモデルは、通算3000勝を超え、凱旋門賞を4勝するなど、輝かしい実績を持つ、フランスのイヴ・サンマルタン元騎手。その絵をデビュー前から毎日のように見ていたからこそ、職人肌の騎手になっていったのかもしれない。

 ダービーの前、「緊張はしません。馬に走ってもらうのに、緊張したら馬に伝わるじゃないですか」と笑った。その言葉通り、自然体で堂々とした競馬で、クロワデュノールをダービー馬へと導き、理想のジョッキー像に、またひとつ近づくレースとなった。登録している凱旋門賞の舞台にも、ぜひクロワとともに立ってほしいと思う。(山下 優)

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