◆第75回安田記念・G1(6月8日、東京競馬場・芝1600メートル)
第75回安田記念・G1(8日、東京)に、昨年の最優秀マイラー、ソウルラッシュが4年連続で出走する。前走のドバイ・ターフで香港最強馬ロマンチックウォリアーに勝利。
―前走のドバイ・ターフは、Cデムーロ騎手とのコンビで強敵ロマンチックウォリアーを破って海外G1初制覇。「0・01馬身差」の大接戦で見事に差し切りました。
「最後にすごい脚で伸びてきてくれたので勝ったのではと思ったのですが、(写真判定に)相当な時間がかかりましたからね。どうだろうって。ドバイで勝つこともそうですけど、王者ロマンチックウォリアーに勝ったということがとてもうれしかったです。去年の安田記念のリベンジも果たせて、クリスチャン様、本当にありがとうございましたという気持ちでした」
―主戦場のマイルではなく、1800メートルに挑戦された理由は。
「実は池江先生(泰寿調教師)は、香港の方が合うのでは、とおっしゃっていたのです。少しズブくなったというので距離を延ばして中山記念(芝1800メートル)を使ったのですが、3着になってしまいまして、距離が向かないのではという話になりました。今年は最後の年で『ドバイはロマンチックウォリアーのほか、日本の強い馬も出走するので、相手関係を考えると香港のマイルの方が勝つ可能性がある』とおっしゃっていたのです。でもなぜか私は、ドバイに行きたいと思いました。私自身もドバイで走らせたことがありませんし、ワンターンだから決して悪くはないのではと思いまして。
―今年が現役ラストイヤーと決めていらっしゃったんですね。
「いえ、そもそも去年で引退する予定だったのです。マイルCSを勝って引退しようかと思ったのですが、池江先生からも『馬自身が若々しいですから、あと1年使ったらどうですか』とご進言をいただいたので、現役を1年延ばすことにしました」
―G1初制覇となった昨秋のマイルCSは、団野騎手の派手なガッツポーズも印象的でした。
「ものすごく喜んでいましたね(笑)。私もキセキ以来のG1勝利(17年菊花賞)で、ちょっと時間がかかりましたが、勝ててよかったです。お母さんのエターナルブーケも私の馬で、その子供で勝てたということでも思い入れはありました」
―4年連続となる安田記念への挑戦は、今度こそという思いですか。
「イギリスのサセックスS(7月30日、グッドウッド競馬場・芝1600メートル)の招待も来ていましたので、どうしようかなと悩んだうえで、ちゃんと安田記念に決めたのは2週間前でした。池江先生は当然、安田記念を視野に入れていたと思いますし、また海外はいろいろな準備もありますからね。毎年頑張ってくれてはいますが勝ち切れていませんので、勝てたらうれしいですよね」
―悲願のVを期待しています。最後に秋への展望はいかがでしょうか。
「ブリーダーズCマイルなどを含めて、池江先生のご意見や馬の状態を見ながら考えていきたいですね。私の個人的な考えではありますが、たとえば天皇賞・秋なども選択肢になるのかなと思ったりしています。
【取材後記】
ざっくばらんな語り口で話題が尽きず、予定の取材時間をオーバーしてしまうほどだった。石川オーナーに17年の菊花賞でG1初制覇をもたらしたキセキは、引退後は種牡馬となり、今年の2歳世代で初年度産駒がデビューを迎える。期待のほどをうかがうと、「小顔で脚長なタイプが多いみたいで、格好良く見えます。すごく楽しみにしています」と声のトーンが自然と弾んだ。
この世代は数頭のキセキ産駒を所有しているとのことで、どれも思い入れの強さが伝わってきた。そのうち一頭のサイン(牡、栗東・佐藤悠厩舎)は、順調にいけば7月頃にデビューできそうだという。その母イヴも自身の愛馬で、近い将来にはソウルラッシュの子供も誕生することになるだろう。「縁がある馬で勝つのがうれしいです」という言葉から、改めて競馬の魅力や楽しさに気づかされた。(坂本)
◆“四度目の正直” 84年のグレード制導入後、JRAの同一G1に4年連続で出走し、4年目に初勝利を挙げた例は過去に一度しかない。カンパニーが5~8歳時に走った天皇賞・秋(06年〈16〉着、07年〈3〉着、08年〈4〉着、09年《1》着)で、ソウルラッシュが勝てば2例目。
◆石川 達絵(いしかわ・たつえ)東京都出身。2003年に南関東の大井で地方競馬の馬主資格を、09年にJRAの馬主資格を取得した。05年に携帯電話に特化したサービスの提供を行う株式会社デジマースを設立し、代表取締役社長に就任。現在は音楽や動画など多くのアプリやサービスを展開。競馬情報配信サービス「WIN! 競馬」を提供している。1日の日本ダービーには所有馬のショウヘイが出走し3着だった。