JRAは16日、25年度の顕彰馬に国内外G16連勝のイクイノックス(牡6歳)を選定したと発表した。父キタサンブラック(20年選定)と親子2代となる38頭目。
“世界ナンバーワンホース”にまた一つ勲章が加わった。イクイノックスは有効投票数158票中143票、得票率90・5%の支持を集め、20年に選定された父キタサンブラックと親子2代で殿堂入り。対象初年度での堂々たる結果に、木村調教師は「多くの方々の支持をいただきましたこと、御礼申し上げます。引退レースとなったジャパンCを制覇したことが、まだ記憶に新しいこのタイミングで選定いただきましたことは、彼が日本の競馬史に確かな足跡を残すことができた証しであると思っております」と万感の思いを口にした。
最強という言葉が似合いすぎる現役生活だった。圧倒的なパフォーマンスは、キャリア10戦8勝、史上初のG16連戦6連勝という数字をもってしても計り知れない。23年ドバイ・シーマクラシックで逃げて2分25秒65のレコードを記録すると、同年の天皇賞・秋は従来の時計を0秒9も更新する空前絶後のJRAレコード1分55秒2を樹立。引退レースのジャパンCでは、その年の牝馬3冠馬リバティアイランドを4馬身突き放し完全無欠の強さを見せつけた。
24年1月に発表された国際競馬統括機関連盟(IFHA)による「ロンジンワールドベストレースホースランキング」では、14年ジャスタウェイ以来となる日本馬2頭目の年間1位を獲得。ジャパンCも23年の世界年間ベストレースに選ばれるなど、その強さは海外にまでとどろいた。同馬を所有したシルクレーシングの米本昌史代表が「日本競馬が世界に誇れるレベルに達していることを、自らの走りで証明してくれました」と語るように、日本競馬の進化を象徴する存在と言っていいだろう。
引退後は北海道安平町の社台スタリオンステーションで種牡馬入りし、初年度は204頭に種付け。今年誕生した当歳は7月15日のセレクトセールに上場予定。伝説を築き上げた怪物が、今度は父として競馬史に名を刻む。(角田 晨)
◆顕彰馬(けんしょうば) 1984年に、JRAの発展に多大な貢献があった過去の名馬の功績をたたえる目的で設置された。99年までは顕彰馬選考委員会の審議により決定されていたが、それ以降は報道関係者の投票(1人最大4頭)となり、総投票者の4分の3(今年の場合は有資格者158票中119票)以上の票数を得れば選出される。顕彰者はJRA創立50周年(04年)、60周年(14年)記念事業の一環で、中央競馬の発展に特に貢献があった元調教師、元騎手が選定され、15年以降は、調教師は〈1〉おおむね1000勝以上〈2〉G15勝以上〈3〉年間最多勝利など顕著な成績を記録という要件を満たし、かつ顕彰するにふさわしい者が選定される。
イクイノックス 父キタサンブラック、母シャトーブランシュ(父キングヘイロー)。19年3月23日生まれ。北海道安平町・ノーザンファームの生産。現役時代は美浦・木村哲也厩舎所属。総獲得賞金は22億1544万6100円。JRA賞は22、23年年度代表馬、22年最優秀3歳牡馬、23年最優秀4歳以上牡馬。