JRAは16日、今年3月に定年引退した音無秀孝元調教師(71)が、調教師として12人目の顕彰者に選ばれたと発表した。

 唯一無二のホースマン人生を歩んだ名伯楽が大きな勲章を手にした。

調教師では史上12人目の顕彰者選定。音無元調教師は「このような名誉ある賞は狙っていただけるものではなく、皆様に応援していただき選んでいただけたことは大変光栄です」と喜んだ。

 異色の道のりをたどってきた。中学卒業後に大阪で料理人となったが、18歳で騎手を目指して競馬界入り。乗馬の経験がなく、24歳の遅いデビューで、85年のオークスをノアノハコブネで勝ちはしたが、15年間で84勝のみ。調教師としても95年の開業から7年は年間20勝未満。しかし、坂路脇にできた角馬場を活用すると成績が格段に良化する。02年に前年の倍以上の34勝を挙げると、以降はリーディングの上位常連となり、10年には52勝で初の全国リーディングに輝いた。JRA通算996勝で、地方・海外を合わせると1000勝を超える。

 02年から今年までの23年間で重賞未勝利は1度だけ。G114勝を含む重賞90勝。近年は23年の米・BCクラシックで2着のデルマソトガケなど海外を主戦場にする馬も育てた。

国内では8歳秋にG1を連勝したカンパニーなど個性的な名馬を育成。晩年に手がけたG1馬のクリソベリル、インディチャンプは今年産駒デビューの新種牡馬、ピクシーナイトの子供は来年にもデビューする。「今後は管理した子供たちの活躍を楽しみにしながら、競馬界の発展に少しでも尽力していければと思います」。これからも温かく競馬を見守っていく。(山本 武志)

 ◆音無 秀孝(おとなし・ひでたか) 1954年6月10日、宮崎県生まれ。71歳。79年に騎手デビューし、85年のオークスをノアノハコブネで制覇。93年に引退。95年に栗東で厩舎を開業し、同年の北九州記念(イナズマタカオー)が初勝利だった。2006年の高松宮記念(オレハマッテルゼ)でG1初制覇。09年に最多賞金獲得調教師賞、10年に最多勝利調教師賞を受賞。25年3月4日に定年引退。

編集部おすすめ