大相撲の元大関・2代目増位山の沢田昇(さわだ・のぼる)さんが15日午後2時38分、肝不全のため死去した。76歳。

17日に日本相撲協会などが発表した。増位山さんの悲報を受け、現役当時ライバルだった元大関の琴風さんが追悼した。

******

 粋な力士だった。イケメンでスタイルも抜群、歌もうまかった。私には「まわり道」というヒット曲があるが、増位山さんは「そんな夕子にほれました」「そんな女のひとりごと」などが大ヒットした。レベルが違っていた。

 2人で大晦日(おおみそか)に行われたテレビ東京の「年忘れにっぽんの歌」に出たこともある。ライバルではない。私の歌唱法は正統派だと思う。増位山さんは夜の世界で働く女性が好むような、泣くような歌声だった。日本相撲協会を65歳で定年退職する時、増位山さんに「これからどうするんですか」と聞いたことがある。すると「俺には歌があるから幸せだよ」と言っていた。

 女性人気もすごかった。私が若い頃の地方巡業は土俵が屋外にあり、支度部屋もロープでつなぎ合わせた簡易的なものだった。私が片付けを始めた時、支度部屋の奥で若い女性と肩を寄せ合っていた増位山さんと目があってしまったこともあった。いい思い出だ。

 相撲は立ち合いで手を出して相手の動きを止め、懐に入って内掛け、肩透かしを決める技巧派。過去の対戦は7勝3敗と私がまわしを取って引きつけて圧倒したが、負けた3番ははたき込み、掛け投げ、肩透かしと術中にはまった。

 2人とも親方になってからは「大関会」でご一緒させてもらったが、朝潮さん、旭国さん、そして増位山さんと同年代の仲間がみんな逝ってしまった。本当にさみしくて悲しい。合掌(元大関・琴風、スポーツ報知評論家)

編集部おすすめ