日本陸上競技連盟は25日、都内で理事会を開き、五輪女子マラソン2大会連続メダリストで、これまで副会長だった有森裕子氏(58)を新会長に選んだ。任期は2年。

今年設立100周年を迎えた陸連で、女性、五輪経験者では初の会長。有森氏は、陸上界の発展へ尽力する決意を語った。前任の尾縣貢氏(65)は顧問に就き、新任の理事には男子走り高跳びで日本記録を持つ戸辺直人選手(33)=JAL=らが名を連ねた。理事28人中、女性が14人と比率は過去最高となった。

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 有森さんは心配りのできる人だ。1999年夏、有森さんの渡米取材のため、成田空港に向かった。別の取材から4時間かけて移動したが、交通機関の乱れで遅れてしまった。囲み取材は終わってしまったと諦めた瞬間、「遅いですよ」の声が。有森さんが「待っていたんですよ」と笑っていた。事情を知り、他紙の記者にも私を待ってほしいと呼びかけてくれたという。

 大きな故障を乗り越えて日本女子初の五輪連続メダル。「よろこびを力に」という有森さんの言葉は励まし、支えてくれた人への感謝と走れる喜びを表している。

アトランタ五輪で銅メダル獲得時、「メダルの色は一つ落ちたけど一番輝いていた。初めて自分で自分を褒めたいと思います」と言った。流行語大賞にもなった言葉だ。だが、「自分を褒めてあげたい」と、一部で違う言い回しで伝わった。

 間違って伝わっても「たぶん、見ている人が、私にそうしてあげたいと思った気持ちからなんでしょうけど…」。戸惑いながらも笑顔で感謝を示した有森さん。変わらぬ心配りで皆を引っ張ってくれそうだ。(1989~99年陸上担当・谷口 隆俊)

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