プロボクシング元WBC世界スーパーライト級王者の帝拳ジム・浜田剛史代表(64)は、元統一世界ヘビー級王者マイク・タイソン(米国)の試合中継や事前番組で、ゲスト解説の長嶋茂雄さん(享年89)と何度も共演した。長嶋さんの奔放な言動が巻き起こした生放送でのハプニングエピソードを明かし、「本当に個性の強い方でした」と思い出を語った。

(取材・構成=勝田 成紀)

 浜田さんと長嶋さんは1990年2月11日、タイソンが東京ドームでジェームス・ダグラス(米国)に10回KOで敗れた世紀の番狂わせなど、多くの試合中継で共演した。中継局の日本テレビの番組で、試合の約1週間前から連日、2人で直前情報を伝えた。タイソンが89年7月のカール・ウィリアムス(米国)との防衛戦を控えたある日、生放送で思わぬハプニングがあったという。

 「私がタイソン役、長身の長嶋さんがウィリアムス役となって、どういう試合になるかの展望を実演することになりました。放送前に、私が長嶋さんのパンチをダッキングでかわした後、左ボディーから顔面への左フックのコンビネーションでKOするという予行演習を何度もしていました」

 いざ本番。番組内での1コーナーのため、秒単位でタイムスケジュールが組まれていたが…。

 「私が左フックを打ってKOとなるはずが、長嶋さんがどんどん打ち返してくるんですよ。こっちは予想もしていないし、中継の予定時間もどんどんオーバーするし。どうしていいか分からず、困りました。長嶋さんは『あ~、ついついパンチが出てしまったよぉ』と笑っていましたけどね」

 現役の世界王者時代も、多摩川でのロードワーク中に、たびたび長嶋さんとすれ違ったという。

 「『おはようございます』とあいさつすると『いやぁ頑張ってるねえ』と声をかけてくださいました。『浜田さん、僕はね、(サードだけど)セカンドゴロを捕ったんだよ』とうれしそうに話してくださったこともありました」

 「当時の人たちにとって、長嶋さんは今の大谷翔平選手以上の存在だったかもしれないですね」と語った浜田代表は、「人を惹(ひ)きつける、本当に個性の強い方でした」と太陽のような笑顔を懐かしんだ。

 ◆浜田 剛史(はまだ・つよし)1960年11月29日、沖縄・中城村生まれ。64歳。79年5月プロデビュー。86年7月24日にレネ・アルレドンド(メキシコ)を1回KOで破りWBCスーパーライト級王座を奪取。防衛1度。88年3月、現役引退。15戦連続KO勝利の日本記録保持者。現役時代の戦績は21勝(19KO)2敗1無効試合。左ファイター。引退後は後進の指導のほか、ボクシング中継の解説者などで活躍。07年3月、帝拳プロモーション代表に就任。

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