6月26日に自身のSNSでジストニアの手術を受けたことを公表した陸上長距離チームのMABPマーヴェリックの神野大地選手兼監督(31)が13日、軽い練習を再開し、今秋にレース復帰を目指すことを明かした。

 神野選手兼監督はこの日、東海大長距離競技会が行われた神奈川・平塚市の東海大湘南キャンパス陸上競技場に来場。

気温約30度の蒸し暑い中、男子5000メートルで14分17秒73でトップを取ったエースの堀尾謙介(28)の走りを見守った。「堀尾は故障明けのため、きょうは14分10~20秒で走ればいいと考えていました。設定タイム通りに走ってくれました」と神野選手兼監督は指導者として冷静にレースを評した。

 自身の体調については「今は全く問題ありません。手術の10日後から軽く走り出しました。8月から本格的な練習を再開し、9月か10月には記録会に出場したいと考えています」と明るい表情で語った。

 ジストニアは、神経系の障害による筋収縮にかかわる運動障害など疾患。「この2年間、思うような走りができませんでした。手術を終えて、まだ、軽く走り始めたばかりですが、感覚は良くなりました」と快方に向かっている手応えを明かした。

 実業団の新チームのMABPマーヴェリックは今季、本格始動した。プロ野球やJリーグのように愛称をつくり、チーム名を「MABPマーヴェリック」とするなど新たな取り組みにチャレンジしている。マーヴェリックは「異端者」や「型破り」の意味を持つ。

4月に行われた「お披露目会」では「ニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)に1年で出場、5年で入賞、10年で優勝を目標にしています」と神野選手兼監督がまさに「型破り」な挑戦を宣言した。

 今季の最大のターゲットは、ニューイヤー駅伝の予選を兼ねた東日本実業団駅伝(11月3日、埼玉・熊谷スポーツ文化公園内周回コース7区間76・4キロ)。今季のMABPマーヴェリックの陣容は、日本人選手が神野選手兼監督を含めて8人、外国人が2人。東日本実業団駅伝、ニューイヤー駅伝ともに外国人選手は走ることができるインターナショナル区間は1区間だけ。「日本人選手8人で6区間を担うので余裕はありません。もし、3人故障してしまったら、出場できない。若い選手が故障なく走ってくれることが一番ですが、僕も万全の準備をする必要があります」と神野選手兼監督は表情を引き締めて話す。

 頼りとなる選手は、やはり、最も実績がある堀尾。「堀尾にはしっかりエース区間を走ってほしい」と神野選手兼監督は期待を込めて話す。堀尾自身も「最も責任ある区間は僕が走るつもりです。他チームの強い選手と勝負します」と意欲を示す。

 青学大時代に箱根駅伝5区で活躍し「3代目・山の神」と呼ばれた神野選手兼監督は、今もなお、注目度が高い。

「正直、手術は怖かったです。ジストニアの手術を受けたことを公表した後、同じ病気で苦しむ多くの人から連絡をいただきました。僕が元気に走ることで、何かのメッセージを発信できると思います」と前向きに語る。

 かつて、箱根の山を颯爽(さっそう)と乗り越えた神野大地は、病気も乗り越えようとしている。

編集部おすすめ