◆大相撲名古屋場所2日目(14日、IGアリーナ)

 西前頭筆頭・若元春が横綱・豊昇龍を寄り切りで破り、新会場・IGアリーナの金星第1号を挙げた。若元春の金星は24年初場所の照ノ富士戦以来で2個目。

場所前にはNHK大河ドラマにも出演した31歳が、悲願の初賜杯へ弾みを付けた。新横綱・大の里は東前頭筆頭・安青錦を圧倒して押し出し、2連勝とした。

 アジア最大級のアリーナに、割れんばかりの拍手と歓声が響いた。新会場で最初の金星をつかんだのは若元春だった。「金星を取るということは、(自らは)番付を落としたということなので。力士として誇れることではない」。三役常連としての意地ものぞかせたが「横綱に勝つのはめったにないこと」。支度部屋での表情には充実感も漂った。

 豊昇龍には過去2勝13敗で、10連敗中だった。「正面から当たるとスピードで負ける。横から攻めていこう」と前日から対策を練った。相手の鋭い出足を警戒し、立ち合いでわずかに左にずれて当たると、張り差しに来た相手の右に「スパッと差さった」。

得意の左四つの形になると、横綱が巻き替えに来たタイミングを逃さず一気に寄り切った。

 2年前の名古屋場所。ともに大関取りに挑んだ豊昇龍が優勝して昇進した一方で、自身は9勝6敗にとどまった。当時を「自分はあのタイミングで上がれると思っていなかった。客観的に実力が足りなかった」と冷静に振り返る。あれから2年。30代に入り、稽古で番数がこなせないなど体の衰えを感じる一方で「経験値は積んだ」と自負する。

 6月にNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」に江戸時代の関取役で出演。宴席で主人公・蔦屋重三郎(横浜流星)の名前を呼んで出迎え「初めてのドラマの現場で緊張したけど、人生の経験値になった」。共演した横浜流星(28)らに「頑張ってください」と励まされて臨む今場所。3日目は過去2勝5敗の大の里戦が組まれた。2日連続金星で主役へと躍り出る。

(林 直史)

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