新日本プロレスの真夏の最強戦士決定戦「G1クライマックス35」が19日に北海道札幌の北海きたえーるで開幕する。1991年の第1回から35年目となる今年はA、B両ブロックに10人、計20人のレスラーが最強戦士の座を目指し8・17有明アリーナでの優勝決定戦まで酷暑の列島で激闘を展開する。

 昨年、ザック・セイバーJr.に敗れ準優勝の辻陽太は3年連続3回目の出場となる今年は、Aブロックにエントリーされた。今年は1・4東京ドームでIWGP GLOBALヘビー級王座を奪取、5月には内藤哲也の退団で「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」が解散と飛躍と激闘の渦中にいる。スポーツ報知は、このほど辻を直撃。デビュー8年目を迎えた夏、「G1」初優勝と新日本プロレス「復活」にかける思いを激白した。

 昨年は、春の最強戦士決定トーナメント「NEW JAPAN CUP」で初優勝し「G1」で準優勝。今年は1・4東京ドームでIWGP GLOBALヘビー級王座を奪取し確実に進化してきた。トップへの階段を駆け上がるごとに大きくなってきたものがある。それは「新日本プロレス」を背負う責任感だ。

 「東京ドームでIWGP GLOBALヘビー級をとって、チャンピオンとしての責任感、新日本プロレスをもっと背負っていく責任感は、年々増しているし、チャンピオンになったことでさらに大きなものになりました。自分が今、やらなくてはいけないことは新日本プロレスを復活させること。イコールIWGPを取り戻すことだと思う」

 復活という言葉を使ったが、今の新日本プロレスは過去よりも落ちていると感じているのだろうか。

 「肌で落ちていると感じています。

観客動員もそうだし…あのころの熱気がないんです。僕がヤングライオンでデビューしたころの2018年とか19年。あのころの熱気が会場で感じられないんです。僕がセコンドで入っていたころの熱気はすごかった。(観客)動員は落ちてますけど、(会社全体の)売り上げは、あのころとそんなに変わってないかもしれない。でも熱量でいったら間違いなく落ちています」

 熱気を失った理由は何か。

 「新日本プロレスがファンにそこまで熱くできるものを提供できていない。それは僕らの責任でもある。責任は感じます。僕らが新世代から現世代になったわけですけどその過程の中で生み出せていないことが実際、問題あります」

 その意味で今年5月にロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンを率いた内藤哲也が退団。BUSHIも追随し時代を作った「ロス・インゴ」は自動的に解散した。熱気を取り戻すなら辻自身が行動し新たなムーブメントを作るべきだったとも思う。

新日本プロレスは昭和時代の長州力、前田日明ら…平成時代の武藤敬司、橋本真也ら…トップ選手の離脱者が出れば、一時的な低迷はあったが新星が出現しリングを進化させ活性化させてきた歴史がある。いつまでもファンの間で「ロス・インゴ」の残像がちらつく状況は、前身と進化をはばむ危険もはらんでいると思う。この問いかけに辻は真正面から答えた。

 「今、単純に(行動を)起こすタイミングじゃないなと思った。タイミングの問題です。いずれロス・インゴを抜けて自分のユニットを作るべきだと思っていたので、ロス・インゴがなくなったことに関しては、そのタイミングが早まっただけと思っている。ただ、このタイミングじゃないと思っていた」

 なぜ、そう思ったのか。

 「感覚的なものもあるし、自分の集めたいメンバーも全部そろってからそういう状況ができてから一気に打つべきだと思うので、その準備がまだ整ってなかった。これから整えようと思っています」

 現状は「無所属」として「ロス・インゴ」時代のメンバーだった高橋ヒロム、鷹木信悟と行動を共にする形となっている。

 「ただ、今の無所属っていう状態も結構、自分的には面白い。だって無所属だから何してもいいわけじゃないですか。今まではロス・インゴっていう…個人の集まりでしたけど、ロス・インゴっていう縛りがあった。

その縛りも今はなくなったわけで例えば仮にゲイブと組もうと思えば組めるし…この状況って新日本プロレスではなかなかない状況だったんでこれはこれでちょっと面白いかなと思っているんです」

 そして、こう続けた。

 「個人として自分のやりたいことをやりたい意志の方が強いので、その流れに身を任せたい」

 ユニットがどうのこうのではなく、あくまでもプロレスは、個人の戦いを重要視すると強調した。その意味で最強を決める「G1」はまさに「個人」が問われる重要な戦いになる。

 「このG1で今後3年間ぐらいが占われると思う。オカダ(カズチカ)さんがいなくなって、内藤さんもいなくなって来年から棚橋(弘至)さんもいなくなる。じゃあ我々現世代がここで何を見せることができるのか?っていうのが来年から3年間ぐらいまでは続くと思う。ここでこければ、新日本プロレスはもっとこけると思う」

 その覚悟はあるのか。

 「もちろんあります。新日本プロレスの未来は僕が背負っている。僕が落ちれば落ちる。上がれば新日本プロレスは上がる可能性がさらに高くなる」

(続く。福留 崇広)

 ◆辻の公式リーグ戦

 ▼7・19札幌 SANADA

 ▼7・20札幌 EVIL

 ▼7・22仙台 上村優也

 ▼7・25大田区 大岩陵平

 ▼7・27名古屋(ポートめっせなごや) ボルチン・オレッグ

 ▼8・1高松(サンメッセ香川) タイチ

 ▼8・3福岡 棚橋弘至

 ▼8・7後楽園 デビッド・フィンレー

 ▼8・10高崎(Gメッセ群馬) カラム・ニューマン

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