◆大相撲名古屋場所4日目(16日・IGアリーナ)

 両横綱が敗れて金星配給の波乱が起きた。横綱・豊昇龍は、西前頭2枚目・阿炎に押し出され、3連敗で休場危機に立たされた。

3日連続の金星配給は、昨年春場所の照ノ富士以来の屈辱。新横綱・大の里も東前頭2枚目・王鵬に押し出されて初黒星を喫し、2横綱がそろって金星を配給したのは2020年初場所3日目(1月14日)の白鵬、鶴竜以来だった。全勝は関脇・霧島と平幕の玉鷲、一山本、御嶽海の4人となった。

 豊昇龍が4日目で窮地に立たされた。立ち合いで阿炎の強烈なもろ手突きにのけぞり、右に逃げたが、瞬く間に追い詰められた。相手の右腕を取りながら、左足の指を俵にかけて、残ろうと執念を見せたが押し出された。阿炎の左足が先に土俵外に出たように見え、一度は豊昇龍に軍配が上がったが物言い。約2分間の協議の末、左かかとが先に土俵を割っており行司軍配差し違え。判定は際どかったが、内容は完敗だった。

 館内のどよめきの中で力なく土俵を下りた。支度部屋に戻って来ると、右手を左右に振って取材を拒否。腕組みをしてテレビ画面を見ながら「うーん」と悩ましげな表情を浮かべた。

 横綱昇進3場所目。初日は苦手の高安を下して好発進も、2日目に合口のいい若元春に敗れ、3日目は初顔の安青錦に屈した。宿舎に帰ると、師匠の立浪親方(元小結・旭豊)から「上半身で取り過ぎている。相撲が悪い。前に出なきゃダメ」とハッパをかけられたが、悪い流れは止められず。昇進後3場所連続で当たった阿炎に5連敗となった。

 昇進3場所で8個目の金星配給となった。3日連続は昨年春場所の照ノ富士以来で昭和以降20度目。令和では3人目の屈辱だ。4日目までに3敗も昇進後ワーストと光は見えない。

 場所前は発熱で体調を崩し、2日間稽古を休んだ。出稽古で痛めた左足親指は場所中も治療に出るなど万全ではない。

それでも結果を求められるのが横綱の宿命だ。休場も危ぶまれる状況で、5日目は大の里から金星の王鵬を迎える。八角理事長(元横綱・北勝海)は「豊昇龍はいつも序盤が悪い。稽古が足りないということ。気持ちを強く出さないと」と求めた。

 4日連続金星配給となれば1931年初場所の宮城山以来、94年ぶりの不名誉記録。番付の東西に最高位が並んだ新会場場所で、東の横綱が試練を迎えた。(林 直史)

 ◆横綱の3日連続金星配給 昭和以降で千代の山、稀勢の里の3度、宮城山の2度を含めて過去19度。令和に入ってからは2019年秋場所の鶴竜(朝乃山、大栄翔、友風)と24年春場所の照ノ富士(明生、王鵬、隆の勝)。

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