新日本プロレスの真夏の最強戦士決定戦「G1クライマックス35」が19日に北海道札幌市の北海きたえーるで開幕する。1991年の第1回から35年目となる今年はA、B両ブロックに10人、計20人のレスラーが最強戦士の座を目指し8・17有明アリーナでの優勝決定戦まで酷暑の列島で激闘を展開する。
昨年、ザック・セイバーJr.に敗れ準優勝の辻陽太は3年連続3回目の出場となる今年は、Aブロックにエントリーされた。今年は1・4東京ドームでIWGP GLOBALヘビー級王座を奪取、5月には内藤哲也の退団で「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」が解散と飛躍と激闘の渦中にいる。スポーツ報知は、このほど辻を直撃。デビュー8年目を迎えた夏、「G1」初優勝にかける思いとその後の野望を激白した。
初優勝への真夏の戦い。リーグ戦でのヤマ場を7・27名古屋(ポートめっせなごや)で戦うNEVER無差別級王者のボルチン・オレッグだと明言した。
「ポイントはボルチンだと思っています。僕は今、無冠になったのでAブロックで唯一のシングルのタイトルホルダーがボルチン。対戦するのがちょうど折り返し直前の名古屋。ここでしっかり勢いに乗れるか乗れないかが大事になる。一番の山場はボルチンだと思っています」
カザフスタン出身で32歳のボルチンは、レスリングでアジア選手権フリースタイル125キロ級優勝など、輝かしい経歴を引っ提げ2022年に新日本プロレス入門。23年4月にデビューすると身長187センチ、体重120キロの恵まれた体格を生かしたパワーとナチュラルな強さで頭角を表し昨年、G1初出場。
「ボルチンの成長は半端ない。元から持っているものはすごいわけじゃないですか。体格もあるしレスリングでも結果を残している。今まで足りなかったのは…こんなこと言いたくないんですけど、プロレスはやっぱりキャリアって大事なんです。お客さんをどうのせるか。どう自分を見せるか、相手を見せるか…すごく大事だなと僕も最近理解しはじめた。僕ができてもボルチンは難しいと思っていた。ただ、彼もこの1年でG1、タイトルマッチ…と大舞台を経験してそこの部分に関して経験を積み重ねてきた。ベルトを巻くと自覚が出る。去年、G1で闘ったボルチンとはまったく別だと思っている」
ヤマ場が名古屋のボルチンなら不穏な空気を感じているのが開幕2連戦だ。開幕の7・19札幌でSANADA、翌日の同じ札幌でEVILと「H.O.T」を率いる悪のツートップと連戦になる。
「SANADA、EVILと続くのは不穏ですね。この連戦は、2試合でひとつの試合と考えてもいいかなと思う。ここに関しては考え方を変えて臨みたい」
乱入、レフェリーへの暴行などで常に物議を醸し出している「H.O.T」。極悪ユニットをどう捉えているのか。
「僕はH.O.T肯定派です。EVILを尊敬している。なぜならレスラーとして魅力的なんです。やりたいことを自由にやっている。がんじがらめにされて自分を表現できないレスラーよりも自由で自分のやりたいことをルールの中でやっているH.O.Tはレスラーから見てすごく魅力的な存在」
そう認めた上で「ただ…」と強調した。
「僕がやりたいプロレスはあれではない。それくらいプロレスは幅が広くていいという意味です」
同期の上村優也とは7・22仙台サンプラザで対戦する。昨年は、8月10日のゼビオアリーナ仙台大会で対戦し敗れた。
「上村とは切っても切り離せない存在。彼はケガをしたけど、僕は負けている。G1の借りはG1でしっかり返したい」
万感を込めた戦いが8・3福岡の棚橋弘至戦だ。棚橋にあこがれ新日本プロレスの門を叩いた。来年1・4東京ドームで引退するエースとの戦いをこう位置づける。
「この試合を棚橋弘至ファイナルロードで消化させたくない思いが強い。プロレス界に入ったのは棚橋さんがきっかけ。付き人にもついていた。G1の公式戦はすごいことですけど、このG1のイチリーグ戦で辻と棚橋の物語を終わりにしたくない。棚橋さんに勝ってどこかで辻 vs 棚橋を組んでもう1大会打てと社長に言いたい。
棚橋への思いをさらに明かした。
「棚橋さんの魅力はやられてもやられても立ち上がるところ。それと自分が入門する前に今までのレスラーと違うなと思っていた。当時は新日本プロレスの中では異質だったと思う。だけど気がつけば棚橋弘至の時代になっていた。その存在に惹かれていました。だからこそ、棚橋さんにみじめな姿で引退してほしくない。今は超える存在だけど昔あこがれていた棚橋さんが動けなくなった状態で引退してほしくない。
ならば、引退試合での対戦を目指すのか?
「それは誰しもが狙っている部分はあると思う。でも…僕のプランはG1優勝してIWGPとってドームでIWGP戦をやりたい。だから、ドームで棚橋弘至を指名するのは違うかなと思う」
G1後のプランも聞いた。公約通り優勝すればIWGP世界王者ザック・セイバーJr.への挑戦も見えてくるだろう。ザックを打倒する秘策を明かした。
「今までの自分はザックに届かなかった。しかし、この1年の経験と実績でメンタルは補えた。この前、メキシコに試合で行ってきたんですけど、そこで思ったのは僕のルーツであるメキシコには独特な技がある。それを取り入れてもいいと思った。関節技、投げ技にも特殊な技がある。その技で攻めていってもいいかなと思う」
海外武者修行を行ったメキシコ。再び試合に訪れザックを倒す秘策を見いだしたという。
「ウルフ アロンの入団は新日本プロレスが注目されすごくいいこと。柔道で強さを極めきった男がプロレスのリングの中で何を見せるか楽しみ。ただ、プロレスは別。あなたがこれからやるのはプロレス。プロレスでしっかりここまで上がってこい、と言いたいですね」
最後にG1制覇後の野望を明かした。
「このG1クライマックスは最終的な目標とするベルト分解への第一歩だと思っている。その道のひとつ。最終的に一番やりたいことはベルトを分解すること。その一番の近道がG1優勝してIWGPをとること。そのファーストステップとしてG1を優勝したい」
これまで様々なインタビューなどで明かしている「ベルト分解」。真意を明かした。
「僕の感じ方でしかないですけど、(IWGP)世界ヘビーになってから新日本プロレスはすごくダメになった。実際問題、最近、IWGP世界ヘビー級、トップの権威であるのにずっとセミファイナルで使われている」
5・10米オンタリオ大会では「ダブルメインイベント」とされたが、最終試合は「STRONG女子選手権試合 3WAYマッチ」だった。
「女子ストロングの試合に負ける程度の権威しかないIWGPなんです。それが新日本プロレス最高峰なんです。そんなベルトでいいはずがない。僕にとって新日本プロレスのリングは世界最高のプロレスのリング。その最高のリングでみんなが目指すIWGPのベルトが今そんな状況なんです。元凶をたどればIWGPが(インターコンチネンタル王座と)統合されて世界ヘビー級になったところから始まったわけなんです」
IWGP世界ヘビー級王座は、2021年3月にIWGPヘビー級王座とIWGPインターコンチネンタル王座を統一して制定された。
「単純にインターコンチを封印すればいいだけの話だった。そこで歯車が狂ってしまったと感じる。ヤングライオンで変わった瞬間に立ち会ったしそのあとの流れも感じてますけど、あそこでひとつの流れがすごく変わった。IWGPに戻すことがいいことか悪いことか正直わからない。僕はひとりのレスラーとして戻すべきだと思っているのでそこに向かって進んでいます。IWGP一本でいいです」
新たな時代への進化と「IWGP」原点回帰。辻の壮大な挑戦が「G1」で始まる。
(終わり。福留 崇広)
◆辻の公式リーグ戦
▼7・19札幌 SANADA
▼7・20札幌 EVIL
▼7・22仙台 上村優也
▼7・25大田区 大岩陵平
▼7・27名古屋(ポートめっせなごや) ボルチン・オレッグ
▼8・1高松(サンメッセ香川) タイチ
▼8・3福岡 棚橋弘至
▼8・7後楽園 デビッド・フィンレー
▼8・10高崎(Gメッセ群馬) カラム・ニューマン