◆明治安田J1リーグ▽第24節 FC東京3―2浦和(19日・味スタ)

【浦和担当・金川誉】まるでクラブW杯の続きを見ているかのように、浦和の守備が決壊した。1リーグ再開初戦、FC東京に3失点を喫して敗れた。

クラブW杯では、インテルなど世界の強豪に3試合で計9失点。しかしJ1リーグでは試合前まで1試合平均で1・0失点だった堅守は、もろくも崩れた。

 前半6分、サイドからのクロスにゴール前の人数はそろっていたが、前で触られて失点。MF安居、渡辺のゴールで前半のうちに勝ち越したが、後半22分にも失点した。サイドからのパスをゴール前で受けたFC東京FWマルセロヒアンをDFボザが抑えきれず、振り向きざまのシュートを許すと、DF石原をかすめてゴールへと吸い込まれた。さらに後半43分。CKからゴール前の混戦となり、最後はFC東京FW仲川に押し込まれた。

 スコルジャ監督は「クラブW杯が終わってからローディフェンスの練習をしてきて、そこが今日の強みになると思いましたが、うまくマルセロヒアンを抑えられませんでした」と語った。さらに「特定の選手を名指しすることはしたくない」と続け、2失点目はヒアンを抑えきれなかったDFボザだけの責任にではなく、DFラインと中盤の間が空いたことが原因と分析。さらにクラブW杯後に約4週間の期間があったことで、シーズン開幕直後のように試合勘が不足していたことも理由に挙げた。

 低いDFラインでゴール前を固めて守るローディフェンスは、これまで浦和の強みだった。しかしクラブW杯では、Jリーグでは体験できない距離からのミドルシュートでも失点。

世界では人数がいても守れない経験をしたことで、より強固かつ、アグレッシブな守備への意識は教訓としたはずだった。しかしMF渡辺が「サイドハーフが5枚目(になって)後ろまで下がるとか、中を締めるとか、今日は一切できていなかったかなと思います」と約束事が徹底できていなかったことを悔やんだ。

 堅い守備をベースにした戦いは、スコルジャ監督のスタイルだ。取材の中では、指揮官から「ローディフェンス」という言葉は何度も出てくる。しかしこの日は後半、最終ラインの上下動がおろそかになり、自陣ゴール前にとどまる時間帯が増えた。GK西川は「ラインの上げ下げは、本当にこまめにやっていかないといけない。深いところから1回戻されて、ペナ角(ペナルティーエリアの角)ぐらいのところからのクロスに対しても、DFが1歩、2歩でもラインを上げることが僕のプレーエリアを広げてくれる要因にもなる。そこはDFラインにもっともっと要求してやっていかないといけない」と問題点を挙げた。

 守備をベースに戦うことは、悪いことではない。ただ「ローディフェンスで守る」意識が、足かせのように選手たちをゴール前に張り付かせているようにも見える。西川は「(クラブW杯の)インテル戦のように、ただ引いて守っているだけにはならないように、ゴール前でも奪いに行く守備は全員、意識してやってきた」と語ったが、この日は発揮できず。さらに西川は「ローディフェンスは一つの強みだとは思いますけど、その中でも失点しています。

今のままではだめだ、というところは僕たち自身も感じているので、選手がしっかりとしたアクションをしていかなければ」とも続けた。

 この試合では今夏に加入したFW小森が移籍後初先発したが、シュートはなし。浦和のメンバーを見ると、前線に力のあるアタッカー陣をそろえているだけに、攻撃陣の強みを出すために、より相手陣内で戦う時間帯を増やすことは浮上のために必須だ。「ローディフェンスで守れる」ではなく「ローディフェンスでも守れる」チームへと成長できるか。クラブW杯で学んだ教訓を生かさなければ、浮上のきっかけをつかむことはできない。

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