◆大相撲 ▽名古屋場所11日目(23日、IGアリーナ)

 東前頭14枚目・草野が西同16枚目・御嶽海を上手投げで破り、昨年春場所の尊富士以来の新入幕優勝へ2敗を死守した。唯一の1敗だった西同8枚目・一山本は小結・高安の下手投げに屈し、2敗で草野と安青錦、一山本、琴勝峰の平幕4人が首位に並んだ。

勝ち越しを決めた新横綱・大の里、関脇・霧島ら6人が3敗で追い、1差で10人がひしめく大混戦となった。

 新入幕の24歳が、優勝3度の大関経験者を鮮やかに投げた。草野は2敗で並んでいた御嶽海との一番。頭で当たった立ち合いは相手の圧力に押され、右上手を取られたが「焦らず落ち着いていた」。右を振りほどき、土俵際で頭を押さえての上手投げ。「とっさに。自然と出ました」。涼しい表情で勝ち名乗りを受けた。

 元学生横綱はアマ時代に当時の宮城野親方(元横綱・白鵬翔さん)に誘われ、伊勢ケ浜部屋に入門した。部屋別で最多の関取7人が在籍する環境で尊富士、伯桜鵬らに胸を借りて鍛えられ、「対応力がついた」と成長。新十両から2場所連続優勝で新入幕を果たした。

 場所前には付け人を務めていた元横綱・照ノ富士の伊勢ケ浜親方が部屋を継承した。

初日、幕内で初めて獲得した懸賞1本を恩返しの意味を込めて渡した。9日目に勝ち越しを決めると、すぐに報告。「おめでとう。これからも気を引き締めていけよ」と背中を押された。新たな師匠からは、相撲勘の維持のため、場所中でも朝稽古で5番ほど相撲を取るように促された。新たな調整法も「合っていると思う」と好調を支えている。

 6月に相撲協会を退職した白鵬さんからは通信アプリを通じて、毎日のようにボイスメッセージが届く。「白星おめでとう」「四股、踏めよ」。2人の元横綱に見守られ、結果につなげた。

 2敗で首位に並び、12日目は自身初めての幕内後半戦で関脇・若隆景戦が組まれた。八角理事長(元横綱・北勝海)も「相撲がうまい。何場所後かには上位と当たると思っていたが、こんなに早いとは」と目を見張る。

初めてまげを結って臨む場所で新入幕優勝への期待が高まる。兄弟子で、日大の先輩でもある尊富士が昨年春場所で達成した偉業に並べるか。「一日一番集中して前に出たい」。気負わず挑んでいく。(林 直史)

 ◆尊富士の新入幕優勝 24年春場所で新入幕だった24歳(当時)は1場所15日制が定着した49年5月場所以降では、大鵬に並ぶ初日から11連勝。14日目の朝乃山戦に敗れた際に右足首を負傷したが、12勝2敗で臨んだ千秋楽で豪ノ山に勝ち、新入幕としては1914年5月場所の両国(元関脇)以来、110年ぶりとなる初賜杯を抱いた。

◆草野 直哉(くさの・なおや)

 ▽生まれとサイズ 2001年6月25日、熊本・宇土市。24歳。183センチ、151キロ

 ▽競技歴 6歳で相撲を始め、熊本・文徳高から日大に進み、23年世界選手権男子重量級優勝。卒業後は伊勢ケ浜部屋に入門。24年夏場所に幕下最下位格付け出しで初土俵

 ▽得意技 右四つ、寄り

 ▽幼なじみ 元十両で東幕下41枚目の川副(26)を慕う。保育園からの幼なじみで小中高大と重なり、同じ伊勢ケ浜部屋に所属。

「川副先輩と大一番を取ってみたい」

 ▽競輪一族 親族に競輪選手が多く、父・信一さん(54)は通算172勝。叔父の森内章之さん(57)は195勝を挙げている。

 ▽趣味 サウナ

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