7月20日、函館の芝1800メートルの新馬戦で鮮やかな栗毛が躍動した。その名はアーレムアレス(牡2歳、栗東・橋口慎介厩舎、父ハービンジャー)。
函館競馬場に入厩してからも、アーレムアレスは順調にメニューを消化した。「調教をやるごとに良くなっていましたし、新馬戦の前は記者さんとかに聞かれても、勝ちたい、と言ってました」とひそかに自信を持って迎えた新馬戦。「栗毛のきれいな体だし、つけるか迷ったけど、望んでいる人が多いかなと思ったので」とお尻には姉と同じ、勝負服と同じ色の「紅白のポンポン」を着けて競馬に向かった。
レースでは4番人気だったが、好位から抜け出す優等生の走りで快勝。酒井助手は「ほっとした。これで走らんかったらどうしようとか思って、重賞よりも緊張した」と明かした。SNSでは姉が走った時と同じように、たくさんの写真が流れた。「ドラマですよね、お姉ちゃんが引退して、まだみんなの記憶が薄まらないうちに勝てて。オーナー(フィールドレーシング)さんもシーズン2の始まりですね、と言ってくれました」と喜んだ。
騎乗したのは姉の主戦だった菱田裕二騎手。
引退してから初の再会で、姉に弟の勝利を報告した。「うるっと来ましたね。何も変わっていない。トレセンの時みたいにじゃれてくるかと思ったけど、そんなに激しくなかった」と酒井助手は笑った。おなかにはオルフェーヴルの子がいる。現役時代に比べると、シルエットも少し丸くなったようだ。「(SNSでの発信は)自己満足なんですけど、幸せなことですね。人から愛される馬に携われて、この仕事をやっていて良かったと思いました」と胸を張った。
毛色こそ違うが、人なつこい優しい顔が姉によく似ているアーレムアレス。すでにファンの間では“あっくん”の呼び名が定着している。姉の走る姿を重ねながら、応援していきたいと思う。(中央競馬担当・山下 優)