将棋の佐藤天彦九段、中村太地八段が8月2日から東京・渋谷のPARCO劇場で上演する「カタシロ~Relive vol.2~」(佐藤九段は5日後7時、中村八段は3日後5時)に出演する。このほど、スポーツ報知の取材に応じ、舞台初挑戦の心境を語った。
「一度内容を知ってしまうと、患者役としては出演できない」。事前の稽古は一切行われず、患者役で出演する佐藤九段、中村八段はストーリーを知らされていない。把握しているのは「患者役を演じる」ということのみ。共演者と観客と共に、一度限りの物語を生み出す。
佐藤九段は「舞台のお仕事ということで、まさか将棋の棋士がオファーをもらえるような仕事と思っていなかった。知っていたら出られない仕事なのですが…みたいな感じでオファーを受けたので、そういうことも初めてでした」。中村八段も「何やるの?ってよく聞かれるけど、僕も分からない」と未知の世界に笑うしかない。佐藤九段は隙を見て、スタッフに「もう一人の患者役っていうのは、同じ舞台に立ってる方なんでしたっけ?」と探りを入れたが、回答は得られなかった。
将棋では対局前に研究を行い、1手を指すのに長い考慮時間を使うこともある。本作では稽古はなし、事前調べもしないように通達されている。苦労しているかと思いきや、佐藤九段は「将棋の解説会とかも、かなり即興によってお話することも多い。将棋の内容に関しても最近はAIでがっつり研究するというのも将棋界の主流だけど、その場の人との対話、やりとりが好きな人間」と問題ない様子。
2人の出演は演出・脚本を担当し、医師役として出演するディズムが将棋に興味を持っていたことから実現。中村八段は「今まで将棋に触れてこなかった方にこうした機会で棋士、将棋を知っていただいて、興味を持っていただくというのは有意義な活動だと思う。相乗効果みたいなのが生み出されたらいいなという気持ち」と期待を寄せた。
ステージに立つのは佐藤九段はピアノの発表会以来、約10年ぶり。2週間後に迫った本番を「ソワソワという感じよりは、楽しい予定が近づいてきたなというところではある」と笑顔。「本番ではもしかしたら将棋の対局以上の苦境に立たされることもあるのかなと予想しているけど、そういったところでどういう立ち回りができるかが今後の棋士人生にも関わってくる。自分の社会的な信用が落ちないようにやれたらと思っているけど、せっかくの機会ですので思い切って楽しんでいきたい」と続けた。
一方の中村八段は、高校3年の文化祭の劇以来のステージになる。「ワクワクドキドキという感じ。何が起こるか分からないのが『カタシロ』の醍醐味だと思うので、そのところを来てくださる方に見届けていただきたい」と意気込んだ。