6月にクラブW杯(米国)を現地で視察したJリーグ・野々村芳和チェアマン(53)がこのほど、スポーツ報知の単独インタビューに応じた。クラブ世界一を決める祭典は賞金総額10億ドル(約1470億円)に上る大規模な大会。

ピッチ内外でチェアマンが実感した世界基準、日本のクラブが今後国際舞台で勝つために世界に目を向ける重要性を語った。(取材・構成=岩原 正幸、金川 誉)

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 野々村チェアマンは米国で行われたクラブW杯(日本時間14日閉幕)をJリーグで唯一出場した浦和の2試合を含め、4試合視察した。26年W杯(米国、カナダ、メキシコ)を1年後に控える中、大会で感じた熱気を振り返った。

 「浦和に加え、ブラジルのチームの試合も見た。応援する人の数が多く、熱量がすごかった。(北西部の)シアトルから(南東部の)マイアミに飛行機で6時間かけて移動して、時差が3時間あって。前回のカタールW杯は(面積が秋田県よりやや狭く)一日で2試合見ることもできたけど、選手はもちろん、見に行く人たちも移動が大変だろうなと」

 浦和は第2戦でインテル(イタリア)に1―2と逆転負けし、最終戦はモンテレイ(メキシコ)に0―4で3戦全敗となった。

 「経済力も含め、ここ20年くらい欧州に良い選手が集まる。(浦和を見た時に)力の差はある程度ある中でどう戦うか、難しさはあった。次に出る時は、どんな準備をしなきゃいけないかとか、学びはあったと思う」

 フルミネンセが4強入りするなど、欧州勢優位の時代の中、ブラジル勢が意地を見せた。

 「ブラジルのチームがこんなに戦えるんだというのは驚きだった。帰って、ブラジルのクラブの経営規模も調べた。

例えばフルミネンセは、総売り上げ120~130億円のうち約90億円が人件費と割合が高い。目の前の勝負を勝ちにいくとそうなるかもしれないが、クラブ全体でいかに投資をしていくかというところからすると、欧州や米国のチームの方がいろんなことを考えているんだろうなというのは数字上は見えた」

 大会後、浦和の選手は強度不足を実感したと口にした。クラブ単位でも世界で勝つために日常からの取り組みが重要になる。

 「強度を高くすることは、積み重ねと意識でしかない。それが当たり前の中でやっていれば、間違いなく強くなる。(4年後に向けて)本気でそこ(世界で勝つこと)を目指すクラブがどれだけ出てくるか。海外のチームとの真剣勝負の場をいかに増やしていくかも大事。志を持ってクラブを作っていこうとする人たち、世界のマーケットの中で勝負していくんだというクラブが増えてくることが最も大事なんじゃないかな」

 ◆野々村 芳和(ののむら・よしかづ)1972年5月8日、静岡・清水市(現静岡市)生まれ。53歳。清水東高から慶大を経て、95年に市原(現千葉)加入。2000年にJ2札幌に移籍し、同年のJ1昇格に貢献。01年限りで現役引退。

ポジションはMF。J1通算118試合6得点、J2は36試合2得点。02年から札幌のチームアドバイザーを務め、13年に社長、22年1月に会長に就任。同年3月にJリーグ第6代チェアマンに就いた。

 ◆クラブW杯 FIFAが主催する、クラブチームによる世界選手権大会。4年に1度の開催。今大会から規模が拡大し、32クラブが参加した。決勝はチェルシー(イングランド)―パリSG(フランス)のカードで行われ、3―0で勝利したチェルシーが優勝賞金などで1億ドル(約147億円)以上を手にした。日本からは浦和が唯一出場したが、1次リーグでリバープレート(アルゼンチン)に1―3、インテル(イタリア)に1―2、モンテレイ(メキシコ)に0―4で敗れて3連敗を喫した。

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