◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
競馬場には、競馬に出走しない馬もいることをご存じだろうか。「誘導馬」と呼ばれ、レースに向かう馬たちをパドック(下見所)からコースへ誘導し、円滑な競馬開催を進めるためになくてはならない存在。
だが、仕事はそれだけではない。大切なのは「馬事の普及」だ。誘導馬は各競馬場や、美浦と栗東のトレーニングセンターの乗馬センターにいるが、そこでは毎年会員を募集し、初心者や未経験者、さらに騎手を目指すスポーツ少年団の子どもたちに乗馬の楽しさを伝え、競馬や乗馬業界の門戸を広げる活動を行っている。牧場や競馬場で人材不足が言われているなか、重要な活動に違いない。
G1レースで活躍したディープボンド(今年から京都競馬場で誘導馬)のように、競馬で実績を残した馬が誘導馬になるのが理想ではあるが、誘導馬は適性が何よりも大事。大勢の観衆の前で動揺してしまわないような、タフな精神力と従順な性格が求められる。競走馬としては未勝利であっても、優秀な誘導馬になる可能性は秘めている。競走馬のセカンドキャリアにスポットが当たるようになったが、誘導馬を務められることは素晴らしいと感じている。
最近は誘導馬のぬいぐるみをつくってほしい、という熱心なファンの声も聞く。皆さんも競馬場に行かれた際は、競走馬と同じくらい誘導馬にも注目してほしい。(中央競馬担当・山下 優)
◆山下 優(やました・ゆう)2023年入社。