競泳の世界選手権(シンガポール)が3日に閉幕した。大会最終日には、400メートル個人メドレーで男子の松下知之(東洋大)、女子の成田実生(ルネサンス金町)が共に銀メダルを獲得。
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400メートル個人メドレーは、男女で2人ずつ決勝に進めたことがチームとしてよかった。そして松下選手と成田選手がメダルを獲得し、大会としていい締めくくりができた。
松下選手は、優勝したレオン・マルシャン選手(フランス)との距離感を改めて肌で感じたはずだ。世界では、レースの高速化が進んでいる。予選では前半を1分58秒台で折り返したように、ライバルに勝つための方法を一つずつ積み重ねていくしかない。マルシャン選手は、メドレーリレーの平泳ぎでも58秒44とトップクラスで泳いでいた。松下選手は4種目が平均的に強いが、自分の武器を作っていくことも必要だろう。1種目1種目の100メートルを強化するなど、伸び代は十分にある。
成田選手は、決勝で自己ベストを2秒以上更新しての銀メダル。非常にいいレースで、男子200メートル自由形で3位となった村佐達也選手と同様、日本代表として行った高地合宿が生きたのではないか。
シンガポールでは大会を通じ、日本代表が自ら掲げた複数メダル(計4個)と、入賞14個以上(計16個)の目標を達成した。自己記録も8人が更新し、パリ五輪ではメダル1個など停滞していたところから、いいステップが踏めたのではないか。チームの雰囲気もよく、代表としての行動時間を増やすなど長期的に取り組んできた効果が見えた。倉澤競泳委員長は、今回のチーム作りに一定の手応えと自信を得ただろう。主将を任せた池江璃花子選手も、控え場所の片付けを率先するなど積極的にチームのために動いていたという。今回の経験は、彼女にとっても財産となるはずだ。
今大会、悔しい思いをした選手には「コンフォートゾーン(快適な環境)」から抜け出す強化の重要性を伝えたい。私も27歳の時、12年ロンドン五輪の前に「マイケル・フェルプスに勝つには、フェルプスに勝った選手から学ぶしかない」との思いから、ライバルだったライアン・ロクテ(米国)のもとへ練習に出向いた。想像以上の練習量で、アイデアも豊富。久世由美子コーチと共に大きな学びを得て、実際に記録を伸ばすことができた。
28年ロス五輪に向け、日本代表として一歩前に進むことができた。リレーの強化など課題もあるが、倉澤委員長を中心に、その歩みをより進めてほしい。チームとしてともに過ごす機会、時間はもっと多くてもいいと感じる。これまで水泳界が培ってきた経験を受け継ぎ、選手、コーチ皆で成長してほしい。(北京、ロンドン、リオ五輪3大会連続メダリスト)