昨夏のパリ・パラリンピックで、自転車女子個人ロードレースを連覇した掛川市出身の杉浦佳子(54)=総合メディカル=がこのほど、焼津市で県による「未来を切り拓くDream授業」の講師を務めた。県内の中学1、2年生27人が3泊4日の日程で、国内外で活躍する幅広い人材から授業を受ける取り組み。
薬剤師でもある杉浦は2016年、趣味で始めた自転車競技の事故で重傷を負った。高次脳機能障害が残りながらも再び仕事に戻り、パラアスリートとして世界の頂点に立った。10年足らずの濃密な日々に、参加した中学生は聞き入っていた。質問コーナーで「また競技をやるのにトラウマはなかったのですか?」と聞かれると、「記憶障害になり、今でもその日の記憶は一切ないので怖さはあまりない。ただ、2度と転ばないように体幹を鍛えたり、練習しています」と明かした。
日本代表からは外れたが、競技生活は続けている。来年2月には自らの名前を冠し、障害者と健常者が一緒に争うインクルーシブ大会を千葉で初開催。「今は『頑張らなくてもいい』という時代になっていますが、少しでもチャレンジして、みんなで助け合って生きていけるようになれば」と将来を支える人材たちに期待をかけた。(武田 泰淳)