スポーツ報知では、関東大学サッカーリーグの魅力を伝える企画を随時掲載する。第6回は東洋大のDF山之内佑成(4年)がインタビューに応じ、天皇杯での快進撃を語った。
強い気持ちでジャイアントキリングを起こした。天皇杯では09年の明大、17年の筑波大、19年の法大などがJ1相手に金星を挙げたが、連勝した大学はこれまでなかった。
「過去にJ1に連勝したチームがないのは知っていた。監督にも言われましたが、チーム内でも『歴史に名を刻もう』『J1を2回倒してやるんだ』という熱い気持ちがありました」
1回戦で仙台大を4―2で退け、2回戦でJ1柏との対戦が決まった。J1リーグ1位のボール保持率とパス数をベースに、今季のJ1で優勝争いに加わっている強豪だ。天皇杯全国大会初出場で、公式戦でJクラブと対戦経験がない東洋大にとっては準備から手探りだったが、「歴史に名を刻む」という空気が、チームの覚悟を作り出した。それが「立ち上がりに失点しない」「走る」、そして「考える」だ。
「プロは技術もあって、戦術もしっかりしている。相手はボールを使って動かしてくるが、その分僕たちも体力を使って動かないとダメ。走らないと勝てないのは分かっていた。
戦う中で、突け入る隙が見えた。
「(柏)レイソル戦はFWの横のスペースや残り方が曖昧だったので、そこへのカウンターでチャンスを増やせた」
3回戦の新潟は、前年ルヴァン杯準優勝のチームだ。同じように序盤の守備、カウンターの攻撃を意識して戦ううちに、攻め筋が見えてきた。
「新潟戦は、サイドの攻略でチャンスをものにできました」
柏には無失点で延長戦まで戦い、最後に突き放して2―0。新潟には、追いつかれながら2―1で競り勝った。立ち上がりの失点はなし。走るだけでも、守るだけでも実現できなかった番狂わせ。山之内は東洋大に入学後、一番成長したのは「考える力」と明かす。
「関東の大学は上下関係がすごくて、ルール(規律)もすごいと思っていたが、東洋(大)はあまりなかった。筋トレのメニューも自分で考えてやったりとか、ある程度自分で考えて行動することが多い。先輩も距離が近く、何でも話せる。
最後に本音が漏れた。
「正直、こんなに勝てるとは思っていませんでした。でも、先輩たちが残してくれた天皇杯の舞台でどれだけやれるのか楽しみもあった。東洋のサッカーを少しでも見せられたらと思っていたので、うれしい」
東洋大の「色」が快進撃につながった。
◆東洋大サッカー部 1966年に創部。監督は千葉、大宮などのコーチを歴任した井上卓也氏。創部以来全国大会には長く縁がなかったが、15年の総理大臣杯にて全国大会初出場。21年の総理大臣杯で準優勝、昨年の全日本大学選手権で悲願の初優勝を果たす。練習の拠点は埼玉・朝霞市。主なOBに元日本代表MF坂元達裕、MF仙頭啓矢、DF稲村隼翔ら。