テニスの4大大会今季最終戦、全米オープンの混合ダブルスが、今年から大幅に変更され、新方式で開催される。シングルスや男女ダブルスなどが開幕する8月24日の前週、同19、20日に、優勝賞金100万ドル(約1億4700万円)をかけて争われる。

 本戦ドロー数は16。その内の8組が、シングルス世界ランキングをペアで足した合計の少ない順に選ばれ、残り8組は大会推薦枠(ワイルドカード)での出場となる。試合形式も、決勝を除いて1セット4ゲーム先取。1ゲームはノーアドバンテージ方式で、3セット試合の最終セットは10点先取のタイブレイク方式だ。決勝だけは、1セットが6ゲーム先取となる。

 すでに主催者から出場ペアが発表されており、男子シングルス世界王者で前年全米優勝のヤニク・シナー(イタリア)、同2位で2022年全米覇者のカルロス・アルカラス(スペイン)、女子の元世界女王で2022年全米女王のイガ・シフィオンテク(ポーランド)ら、シングルスのトップ選手らが勢ぞろいした。

 注目のペアのひとつに、アルカラスと女子のエマ・ラドゥカヌ(英国)の全米シングルス優勝コンビがある。ラドゥカヌから声をかけ実現した。五輪ダブルスで3度の金メダル、7度の4大大会シングルス優勝を誇る45歳のビーナス・ウィリアムズ(米国)もけがから復帰し、同胞のライリー・オペルカ(米国)とのペアで出場する。圧倒的なパワーコンビも見物だ。

 2度の全米優勝を誇る元世界女王の大坂なおみ(フリー)は、いつもはほとんどダブルスをプレーしない。大坂が最後に4大大会でダブルスに出場したのは2017年全米が最後だ。

しかし、今回は、テニス界最高のエンターテイナーで元世界6位のガエル・モンフィス(フランス)とのペアで出場が決定。1回戦ではロレンツォ・ムゼッティ(イタリア)、キャサリン・マクナリー(米国)組との対戦することになった。

 19、20日は、ちょうどシングルスの予選が行われている期間だ。24日の主要種目のシングルス本戦開幕を前に、本戦に向けて必死の戦いを行う予選と、混合ダブルスのエンターテインメントの両面で、盛り上げようという企画だ。大会ディレクターのステイシー・アラスター氏は「大会は長年、エンターテインメント性が豊かな革新的な方法を探してきた。この混合ダブルスがまさにそうで、米国だけでなく世界中のファンが、これまで以上に、このすばらしい種目を楽しめるだろう」と話した。

 しかし、ダブルスだけをプレーするダブルス専門家らから、不満の声も上がっている。ダブルスの世界ランキングではエントリーさえできない。過去に4大大会の混合ダブルスで優勝している選手も、招待されなければ出場できないわけで、「正式な種目でなく、ただのエキシビションになった」と非難する選手もいる。

 実は、混合ダブルスは、公式戦では4大大会にしかない。また、与えられるのは賞金と名誉だけで、ダブルス世界ランキングのポイントは得られない。その点では改革やエンタメ化がしやすい種目ともいえる。

 その反面、混合ダブルスも、シングルスやダブルスと同様に、れっきとした正式種目である。1881年に男子単複だけで始まった全米選手権(オープン化は1968年)で、6年後に混合ダブルスが加わった。100年以上の歴史と伝統を持つ同種目は、今年、大きな転換期を迎えている。

編集部おすすめ