将棋の藤井聡太王位=竜王、名人、王座、棋聖、棋王、王将=に永瀬拓矢九段が挑む第66期王位戦七番勝負第4局が19日、福岡・宗像市の「宗像ユリックス」で行われ、対局中に無関係の音声が対局室に流れるトラブルが起きたが、71手目で封じ手となり、1日目を終えた。

 開始は午前9時。

第3局まで3連勝し、6期連続の戴冠へと王手をかけている先手の藤井が飛車先を突いた。後手・永瀬の52手目までスムーズに流れ、53手目の着手は9時58分。藤井は10時のおやつを経て10時26分に再び着座した。だが考慮が既に96分を越えていた11時35分頃に、異例のトラブルが起きた。

 天井のスピーカーから複数の男女の音声が流れてきたのだ。ABEMAの中継からは「いやいや…」「…ないです」「ガラスをつくってるつもりなんで…」などと聞き取れた。けげんな表情の藤井が天井を見上げ、永瀬とともに記録員の斎藤光寿三段に「すみません…」と対局中断を促した。この直後に時計は止められたようだ。

 11時42分頃、斎藤記録員が対局場に戻り「関係者が設備の確認に向かっているそうなので、しばらくお待ちください」と両者に伝えた。立会人の中田功八段が「昼食休憩、12時からだっけ?」と確認すると、斎藤記録員は「12時からです」と答えたが、藤井が「12時半です」と助け舟を出した。

 すると中田立会人が以下のように述べた。「私からの提案としたら(早めの)休憩扱いにして、再開の時間をしっかり決めて、その間に協議してもらう方がいいかもしれません。

希望的観測を話すのはおかしいですけど」とスピーカーの不調が解決するために費やす時間も念頭に置き、昼食休憩の終わる午後1時30分に対局再開すべきとジャッジした。

 日本将棋連盟および藤井奈々女流初段によれば、対局場に流れた音声は、解説など盤上の差し手に関する内容ではないとのこと。そのため対局を再開することができた。原因は、対局室隣にある音響設備の受信機が館外の電波を受信してしまい、音声がスピーカーから流れてしまったことだという。このトラブルを受けて、館内全てのスピーカーの電源を切って対応した。

 中田立会人は「確認のため待たされる時間は負担になると思います。二度と起こってはならないことなので(原因究明と対策は)徹底的にやった方がいいと思います」と怒気を含めて話した。それでも藤井、永瀬は泰然。両者は長い休憩を終えて対局場に戻った。実質の考慮時間が214分(記録上は99分)に達した藤井は、53手目に7筋で歩を成って相手桂を取った。

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