社会人アメリカンフットボールの頂点を争う「Xリーグ」秋季公式戦が、29日に行われる開幕戦「富士通フロンティアーズVS富士フイルム海老名Minerva AFC」を皮切りにスタートする。来季からトップカテゴリーが「X premier」と改称されるため、現体制最後のシーズンは史上初めてラグビーの聖地・秩父宮ラグビー場(東京)で開幕戦を開催。

例年以上に注目が集まるなか、日本一奪還を目指す富士通勢が初陣にかける思いを語った。

 富士通主将のオフェンスライン(OL)大久保壮哉(27)の表情からは、4年連続の日本一を逃した昨シーズンを悔やむ思いがひしひしと伝わってきた。今年1月3日にパナソニックと激突したライスボウルでは、7点リードで迎えた最終クオーターに3連続タッチダウンを許し逆転負け。「1人1人がもっと成長しないと、最後勝ちきれないことを身をもって体験した」と振り返った。

 山本洋ヘッドコーチ(50、以下HC)は「ライスボウルの敗戦でいくと、フィジカルで負けた部分がものすごく大きい」と指摘。近年、チームとしてフィジカル強化には取り組んでいたというが「去年1年でさらに上をいかれた。もう一度見つめ直したい」と立て直しが必要とした。大久保主将もフィジカル面を課題にあげたが、それ以上に問題視したのは1対1の局面で勝ちきれない選手がいる現状。「戦術うんぬんではなく、純粋に1対1で勝てないことをどう自分事として捉えていくか。目の前の1プレー、1回の練習に集中しようとは本当に意識しています」と危機感を強めた。

 チームは今季のスローガン「NO EXCUSES」のもと、「個々のレベルアップ」「コミュニケーション」に重きを置いて活動している。さらに、個人の立候補により7人が集まっていた各ポジションのリーダーは、主将が他の3人を自ら任命する形に変わった。

過去8度日本一に輝いたリーグ屈指の強豪が、さらなる成長を求めて試行錯誤を続けている。

 2季ぶりの頂点を目指す以上、開幕からつまづくことは許されない。「去年同様に一戦一戦積み上げて、まず総合1位を取ることが第一目標。1度でも負ければそこはないと思う」と山本HC。大久保主将も「僕たちの目標はやはり日本一。あの1月3日(ライスボウル)に勝たなければ。そのために8月29日の初戦から一戦必勝で戦わないと、そこにすら行けない」と続いた。目指すゴールへ、開幕からフルスロットルで臨む。

◆ルーキー、OL森本恵翔に注目

 今年のチームの特徴は、将来性豊かなルーキーたち。なかでも山本HCが「新人としては久しぶりにスタートで出られそうな選手」と評したのが、立命大出身のOL森本恵翔(23)だ。「サイズがあって、しっかりフィジカル勝負ができる。リーグのスピードに慣れ、チームのフットボールを理解して戦えれば十分通用すると思う」と期待値は高い。

 同じく立命大から新加入したランニングバック(RB)山嵜大央(だいち、22)は、大学では主将として9年ぶりの甲子園ボウル制覇に貢献。同大会の最優秀選手とミルズ杯(年間最優秀選手)の2冠を獲得した実績を持つ。

 過去3度、リーグMVPに輝いたRBニクソン・トラショーン(33)は今季も健在。若手とベテランがかみ合えば一層脅威となる。

 ◆山本 洋(やまもと・よう)1975年1月12日生まれ。2006年から富士通フロンティアーズでポジションコーチを歴任し、17年から2シーズンの米留学。19年にHC就任し、1年目からチーム史上初のリーグ4連覇に導く。

◆大久保 壮哉(おおくぼ・まさや)1997年12月7日、宮城県生まれ。高校までは野球に没頭し、大学入学後にアメフトの道へ進む。185センチ、137キロ。

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