社会人アメリカンフットボールの頂点を争う「Xリーグ」秋季公式戦が、29日に行われる開幕戦「富士通フロンティアーズVS富士フイルム海老名Minerva AFC」を皮切りにスタートする。来季からトップカテゴリーが「X premier」と改称されるため、現体制最後のシーズンは史上初めてラグビーの聖地・秩父宮ラグビー場(東京)で開幕戦を開催。

例年以上に注目が集まるなか、昨季の巻き返しに燃える富士フイルム勢が初陣にかける思いを語った。

 未勝利に終わった悔しさを糧に、富士フイルムが開幕戦での“下克上”を狙う。「X1 Super」に初昇格を果たした昨シーズンは、0勝5敗1分の勝ち点1で総合10位。朝倉孝雄HC(56)は「去年一番大きな差として感じたのは、スピードと試合全体のテンポの速さ。そこに慣れるまで時間がかかった」と苦戦した要因を分析した。

 主将のOL市川司韻(しいん、26)も「チームとして初めてトップリーグで戦って、スピード感や個人の差など一番上のレベルを知れたのが去年」と総括。「個の力だけだと僕らはまだまだ劣っている。1つ1つのプレーに全員が全力で戦い抜く、全員が最後まで諦めないチームとして戦っていかないといけない」と団結力の重要性を説くと同時に「まずはチーム、というより自分自身が自立しようという話はしています。社会人でスポーツをするなかで、休日しかない練習時間をどう生かすのか。プレーオフに出場するためにどうすればいいのか。1人1人が向き合って考えようと伝えました」と明かした。

 巻き返しへ、頼もしい戦力が加わった。

クオーターバック(QB)のコルデイロ・シェヴァン(25)はアメリカの大学で活躍し、NFLシーホークスのトレーニングキャンプに参加した実績を持つという。朝倉HCは「爆発力がありますね。走っても良し、投げても良し。あと何よりも判断力がある」と能力を絶賛。「肩の強さと球の速さが全然違う。60ヤードだと日本人選手がライナー性のボールになるが、彼は相手の守備の上から落とせる。今年はシェヴァンからのパスプレーが鍵になってくる」と構想を口にする。

 昨季の開幕戦も富士通と対戦したが、結果は7―36で敗戦。「向こうは横綱相撲で来ると思うが、点の取り合いでは分が悪い。どこまで粘り強く、ロースコアに持ち込めるか」と朝倉HC。初戦で強敵を撃破し、目標のプレーオフ進出へ大きな一歩を踏み出す。

◆守備の“長老”DL中園祐輔に期待

 QBシェヴァンがクローズアップされるなか、チームの土台となるのは粘り強い守備。

朝倉HCが活躍を期待するのは、「長老」と呼ばれるディフェンスライン(DL)中園祐輔(34)だ。「今年34歳ですけど、長老はまだまだいける。彼が活躍するような展開になってくると、上位チームとも良い試合ができると思います」と奮起を求めた。

 キャプテン就任2年目の市川に関しては「周りとの調和を考えて、チームをまとめ上げる力がある。細かいところまで目が届く選手」と評価する一方、「1つリクエストするなら、もっとビシビシ厳しくいっていいよ、というところですかね」とHC。隣で苦笑を浮かべた主将は「自分の中でも、やり方として変えられるところは変えていきたい」と言葉に力を込めた。

◆朝倉 孝雄(あさくら・たかお)1968年10月22日生まれ。現役時代はアサヒビールシルバースターでライスボウル優勝を3回経験。母校の早大で監督、桜美林大でコーチを経て、2022年から富士フイルムのHCに就任。

◆市川 司韻(いちかわ・しいん)1999年1月7日生まれ。駒大時代は主将としてチームを引っ張り、U―19世界選手権の代表にも選出された。173センチ、115キロ。

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