宝塚歌劇団元花組トップ娘役、花乃(かの)まりあ。9月は音楽劇「ハムレット」(彌勒忠史演出、3~9日に東京・新国立劇場小劇場、13~15日に京都・先斗町歌舞練場)でオフィーリアを演じる。

ハムレットの恋人だが悲劇的な女性だ。

 「役者として一度、シェークスピア作品には携わってみたかった。このタイミングで出会え、経験させてもらえるのはうれしい」

 有名な役だけに見る側の期待値も高まる。「オフィーリアといえば狂乱のシーンを思い浮かべる方も多い。そこに行き着くまでの(芝居の)プロセスをどう組み立てるかであの場面が大きく違ってくるのではないかとも思います」

 2017年退団から約8年。俳優観はどう変化しただろう。「宝塚の娘役とはまた違った一人の役者としてどこまで認識してもらえるか。その旅を続けている感じですね」。以前から女優・綾瀬はるかに顔が似ているとも言われてきた。「国民的な女優さんに似ていると言っていただけるのはありがたいことです」。申し訳なさそうな表情を見せたが、会ってみると確かによく似ている。

 21年に結婚。

昨夏、男児出産を公表した。家庭と仕事の両立は並大抵ではない。自身の人生で結婚と出産はかなえたい憧れだった。「舞台で踊り尽きていても帰り道はオムツ持って走ってるみたいな。自分の中でのギャップに戸惑う日もあったのですが」と振り返りつつ、「子どもを産んで自分の価値観がどう変わるか未知な部分もあった。でもひとつ分かったことが。ずっとお芝居を続けていくという気持ち。それが確固たるものになった、ということでしょうか」(内野 小百美)

 〇…ハムレットは歌舞伎俳優・片岡千之助。印象について花乃は「ハムレットにまさにぴったりの方ですよね」。役の関係性など気になることで話し合う機会も増え、信頼関係は強固になりつつある。「千之助さんは、大人っぽい面と繊細で純粋な部分の両方を持ち合わせている。稽古場で役を突き詰め、思い悩む姿なども役と重なりますね」と話した。

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