ミュージカル界の三大プリンスの一人と称される浦井健治(44)が、ミュージカル「ある男」の大阪公演(9月12~15日、SkyシアターMBS)を控え、スポーツ報知の単独インタビューに応じた。小池徹平(39)との8年ぶりの共演に「あうんの呼吸みたいなものが生まれている」と自信。

新作にかける熱い思いを語った。(古田 尚)

 2019年に読売文学賞を受賞した芥川賞作家・平野啓一郎氏の傑作小説が、ミュージカル化された。自分は何者か。肩書き、人種、国籍など様々なものをはぎ取り、人間の存在の根源に迫る大作。浦井は「お話をいただいて光栄に思いました。同時にオリジナルミュージカルを作るというのは大変なことでもありながら、豊かな時間になるんじゃないかなと思い、頑張ろうという気持ちで受けさせていただきました」と穏やかな笑みを浮かべた。

 演じるのは「ある男・X」の正体を追う弁護士・城戸章良。X役の小池徹平とは「デスノート THE MUSICAL」(17年)以来、8年ぶりの共演となる。「この8年間、2人とも、いろんな経験もしていますよね。そういった変化も、お互いに感じ合いつつ敬意を持ちながら、前よりも面と向かって真っすぐ向き合っていられる気持ちもあります」。ただ、本作はXの死後に真実を探っていくため、2人が交錯するシーンはほぼない。浦井は「1幕ラストの楽曲はガッツリ2人が歌っているので、一番盛り上がる楽曲になっているのでは」と見どころを明かした。

 演じる弁護士・城戸は、法律の中で自分を模索し、確立してきた人物だと分析する。「日常生活の疑問や自分への葛藤という、みんなが抱えているようなものを結構抱えているんだろうなっていうところは共感しやすい。面白い人物だと思います」。城戸は日本に帰化した在日韓国人3世でもあり、真実を追う中で、自身のアイデンティティーとも向き合わざるを得なくなる。では、浦井の自分らしさとは―。「もしかしたら死ぬまで、自分ってなんだろうって思うこともあるぐらい、自分が一番自分を分かっていないのかもしれない。ただ、『頑固だな』と言われたことはあります」と苦笑いで自己分析した。

 今月4日から東京、広島、愛知、福岡を巡り、大阪は最終公演地となる。長期間舞台に立ち続けるため、体やのどのケアも大切にしているという。「マッサージは切っても切り離せない。のどの管理ですが、歌って脱力していないと、案外(声が)出ないんですよ。乳酸がたまったり、筋肉が固まったりすると、パフォーマンスは落ちる」。

万全の体調での上演はプロとして当然のこと。「老若男女、もしくはその時期に置かれている状況や環境によって、思うことが受け取る側で変わると思う作品なので、それを楽しんでいただけたらなと思います」と呼びかけた。

 他にソニン、濱田めぐみ、上原理生、上川一哉、知念里奈、鹿賀丈史らが出演する。

 〇…ミュージカルの聖地とされる東京・帝国劇場が立て替えのために2月末をもって閉館した。浦井はフィナーレを飾るコンサートに出演。「素晴らしい劇場であり、開けた劇場であり、観劇をされるお客様に愛された劇場であり、そして関わった人たちの人生が劇場にある」と感謝した。多数の名優とともに出演し「僕の20数年っていう年月では語れないぐらいの年月を帝劇で過ごしてきた方々が、最後に楽屋に帰られる瞬間っていうのは重みが違って。本当に素晴らしい経験だった」と振り返った。新たな帝国劇場は30年に開業予定。

 ◆あらすじ 前夫と死別した里枝(ソニン)は長男とともに故郷の宮崎に戻り、出会った大祐(小池)と再婚、新たに生まれた女児との4人で幸せな家庭を築いていた。そんなある日、大祐が不慮の事故で他界。悲しみに打ちひしがれる里枝は長年疎遠だった大祐の兄(上原)から、大祐が全く別人だったと衝撃の事実を突きつけられる。

「私はいったい誰を愛したんでしょうか」。里枝から依頼を受けた弁護士の城戸(浦井)は、大祐として生きていた「ある男・X」の調査に、のめり込んでいく。

 ◆浦井 健治(うらい・けんじ) 1981年8月6日、東京都生まれ。44歳。2000年、ドラマ「仮面ライダークウガ」で俳優デビュー。04年、ミュージカル「エリザベート」で皇太子ルドルフ役に抜てき。06年「アルジャーノンに花束を」「マイ・フェア・レディ」の演技が評価され、第31回菊田一夫演劇賞を受賞。その後も第22回読売演劇大賞最優秀男優賞(15年)、第67回芸術選奨文科大臣新人賞(17年)など数々の賞に輝く。音楽でも13年、井上芳雄、山崎育三郎とユニット「StarS」を結成し、精力的な活動を開始。16年、ソロでもCDデビューを果たした。

編集部おすすめ