◆明治安田J1リーグ ▽第27節 柏4―2浦和(22日・三協F柏)

 【柏担当・浅岡諒祐】記憶に深く残る大逆転勝利を収めた。前半を終了した時点で柏は浦和に2点ビハインド。

ボール保持率は高くも、エリア内でコンパクトに守る相手に得点を奪えなかった。ただ、攻め続けた結果、相手の疲労の色は明らかで、後半に4点をたたみかけた。暫定首位に浮上する劇的勝利に、リカルド・ロドリゲス監督は「このクラブの歴史に残る、そして今日のこの試合をスタジアム、そしてテレビ経由で見ていただいた多くの方々の記憶に残るであろう素晴らしい試合」と声を弾ませた。

 采配がはまった。試合の流れから、前半35分には既にFW細谷真大を準備させていたというが、「ハーフタイムにスタッフと冷静に分析した結果、試合展開として前線に瀬川(祐輔)を投入した方が効果的なのではないか」と、後半開始の交代ではMF瀬川祐輔とDF杉岡大暉を投入。DF古賀が「(ハーフタイム後から)ゴールへの意識が高まった」と振り返るように、後半からシュートにまでつながるシーンが増え、攻撃の勢いが高まった。

 指揮官が「(小泉)佳穂は90分持たないだろう、と。一気に交代するのではなく、段階的にカードを切った」と語るように、後半18分からは細谷、後半29分からはMF仲間隼斗とMF小西雄大をそれぞれ起用。前半の攻撃がボディーブローのようにじわじわと効き、逆転までの3点(瀬川、細谷、小西)はいずれも途中出場の選手が決めた。とどめの4点目を決めたMF久保藤次郎は「(後半)キックオフした瞬間から相手が全然(守備に)来られていなかった。45分でこれだったら、ワンチャンいけるなと思った」と、逆転勝利の予感を感じていたという。

*  *  *

 同じく首位浮上がかかった前節の岡山戦。

浦和戦と同様に前半の立ち上がりに失点し、圧倒された。後半は改善されたが、得点には結びつかず。0―1の後半45分、久保が放ったシュートをキャッチした相手GKスベンド・ブローダーセンは、一瞬の隙を見逃さずFWルカオにロングフィードを供給。191センチ91キロの体格を誇る“重戦車”に個の力を見せつけられ、追加点を決められた。仲間が1点返したが、反撃はそこまでだった。

 思えば、首位で迎えた敵地・鹿島戦でも終盤に決勝点を許して敗れた。それも今季J1トップのパス本数を誇りながら、成功率90%以上の精度を記録する古賀のパスミスから生まれた、一瞬の隙からだ。鹿島の勝利への執念、積み重ねてきたものが上回った、と感じざるを得なかった。

 徳島でJ2優勝、浦和で天皇杯優勝とACLの決勝進出に導いた指揮官は、日々の取り組みに加えて「あの時は(首位の)チャンスや重要な瞬間に、勇気を持って1歩前進する瞬間があった」と、優勝したチームの共通点を明かす。

 では、岡山戦はどうだったか。ロドリゲス監督は首を横に振った。

 「勝てば首位に立てる絶好のチャンスにもかかわらず、そこでそのチャンスをもぎ取ろうという姿が選手たちから感じられたかというと、決してそうではなかった。

そこに私はやはり違和感を感じましたし、フラストレーションがありました」

 柏には優勝経験のある選手が少ない。DF杉岡大暉(18年・ルヴァン杯)、MF小泉佳穂(21年・天皇杯、22年・ACL)、MF瀬川祐輔(23年・天皇杯)らカップ戦の優勝経験者はいるが、J1でのリーグ優勝は1人もいない。優勝するだけの強さを持つためには、あと一歩、精神的な成長を遂げる必要があった。

 だからこそ、指揮官は浦和戦までの練習で「チャンスをしっかりとつかみ取ろう。そのような強い気持ちが重要」と伝えてきた。この試合でも、ハーフタイム終了間際に「俺らは逆転できる。自分たちを信じて攻撃的にいこう。間違いなく3点は取れる」と選手を鼓舞したという。その言葉通りに3点を奪い、さらに4点目も奪った。前節の反省を生かして、全力でチャンスをつかみ取った。古賀は「0―2でなかなか難しい展開にはしてしまいましたけど、みんなが諦めずに信じてやり続けた結果なのかな」とうなずいた。

*  *  *

 劇的な勝利を収めても、選手からは反省の言葉も出た。

久保は「結果的には勝てたので良かった」としつつ、「スイッチが入るのが遅かった。本当は前半からやりたかったんですけどね…」と言えば、細谷も「あと2点は取れた。そこはしっかりと反省したい」と浮かれた様子は一切なかった。

 この試合で暫定首位に浮上したが、翌日には鹿島が首位に入れ替わった。「9月は山場。上位陣との対決が9月に残っている。今日、勝つか負けるかで、そこにつながる意味合いも変わってくる。0―2という、よりパワーが必要なシチュエーションでもしっかり勝ち切れて、チーム力を示せた」と古賀。この浦和戦をターニングポイントにしたい。

編集部おすすめ