日本テレビ系刑事ドラマ「太陽にほえろ!」で、物語の舞台となった七曲署の警部補「山さん」役で知られた俳優の露口茂(つゆぐち・しげる、本名同じ)さんが4月28日、老衰のため都内の自宅で死去していたことが2日、分かった。93歳だった。

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 「露口茂」は、いかつい顔つきなので近寄りがたい雰囲気が漂う。そのイメージで見るため、発するセリフの一言一句に引き込まれてしまう。忘れられない作品に名匠・今村昌平監督「ええじゃないか」(1981年)を挙げる。金蔵という新興の武器商人役だったが“山さん”とは別人のキャラクターで驚かされた。

 金蔵は見せ物小屋を仕切り、背中に入れ墨をしたヤクザな面も。一方で賄賂を渡して幕府にも通じるなど実に多面的。そんな男を巧みに演じた。三木のり平さんとの風呂場でのシーン、桃井かおりとの哀愁漂う濡(ぬ)れ場。剛柔を変化自在にこなし、「芸域の広さ」で圧倒した。

 露口さんはこれで終わらない。“ええじゃないか”は幕末の民衆運動。この動きを制する中、幕府軍の銃に蜂の巣のように撃たれて壮絶に逝く。

武器商人にとって何という皮肉。出演シーンの最後まで役を超越し、役者としての存在の大きさを見せつけた。(内野 小百美)

 ◆露口 茂(つゆぐち・しげる)1932年4月8日、東京都生まれ。愛媛大2年で中退。上京して俳優座養成所入り。57年NHK「東京の虹」で映像デビュー。今村昌平監督の「赤い殺意」で評価を集めた。主な出演作はNHK大河「風と雲と虹と」、NHK「阿修羅のごとく パート2」、映画「ええじゃないか」など。

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