サッカー女子日本代表なでしこジャパン」のDF南萌華(26)が、このほどスポーツ報知などの合同インタビューに応じた。南は今季からイングランド1部ブライトンに移籍。

前所属のローマとの違いや、新天地での自身の可能性などを語った。(取材・構成=浅岡 諒祐)

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 新たな挑戦に胸を躍らせている。ローマでの3シーズンで2度のセリエA制覇を経験した南は、今季からプレーの場をブライトンに移した。初のイングランド挑戦となったここまでの充実ぶりを明かす。

 「ブライトンに来て、選手同士の距離感がすごい日本と似ているな、と。選手1人1人の能力では、イタリアとは違う技術の高さをトレーニングですごい感じます。イングランドの方がより戦術的で、頭を使うサッカー。その中で自分に求められることもまた変わってくる。イタリアとはまた違った環境で、マッチアップする選手たちも変わるので、個人的にもまた1段階成長できる場所かなと感じています」

 さらなる成長を志す。昨年12月になでしこジャパンの新監督としてニルス・ニールセン監督(53)が就任して以降、なでしこジャパンはボールを保持する攻撃的なスタイルへと変貌(へんぼう)を遂げた。「特にビルドアップの部分は個人的に成長したいと思っていた」と南。同じくポゼッションサッカーを志向することが移籍の決め手となった。

 「ブライトンでやっているサッカーも、なでしこでやっているサッカーも全てつながっていると考えています。味方の立ち位置や、どこにスペースが出来たかをゲームの中でよりつかめるようになれれば、日本のつなぐサッカーにより順応していける。どんな強い相手でも、どれだけプレッシャーが来ても、選手の立ち位置や距離感で剥がせる。味方の動きを見てポジショニングを変えたり、相手のプレッシャーや守備のかけ方で立ち位置や攻撃の形を変えたりできれば、どんな相手でも戦える」

 施設の充実度にも驚いている。特に、クラブハウスは「今までのどのクラブよりもいい。女子でこの規模のクラブハウスを作れるのか、と正直びっくりした」と明かすほどだ。

 「男子のチームと同じ施設に女子のクラブハウスもある。ジムやスパがあったり、選手が100%のコンディションで常にいられて、最高の施設。トレーニングが終わってから食事して、またジムに戻ってきてと、全てが1つの施設で完結する。たくさんのスタッフもいて、よりプレーに集中できる環境が整っている」

 2018年にプロ化し、昨季から独立運営に変わったイングランドのウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)。欧州の中でも屈指の観客動員数と規模を誇るが、日常でも女子サッカーの浸透度を実感する。

 「男子のスタジアムに行っても、女子の選手の写真がしっかり飾ってある。

あとは普段のスーパーの何気ないスナック菓子に女子の選手が掲載されていたりと、自分たちが生活していて無意識に目にするものに女子の選手たちの宣伝が結構されている。今後日本でもそうなっていってほしい。すぐには難しいかもしれないが、自分たちが少しでもその力になれるように頑張りたい」

 今回が2度目の移籍。22年にローマに移籍した際は、初の海外で「チームになじむより、とりあえず海外に慣れるので精いっぱいだった」という。しかし今回は環境の変化にも楽しむ余裕が生まれた。

 「海外にだいぶ慣れてきたので、生活の面でもだいぶスムーズに生活できています。気持ちの面でもスムーズさが違うので、今回の方がよりチームになじみやすくなっているのかなと思っています。ブライトンはイングランドの中でも南にあるチームなので、天気もそんなに悪くない。個人的には海も好き。自分が住んでいる所から海が見えて、サッカー以外でもリラックスできている。オンとオフ、しっかりした生活が送れています」

 WSLでは今季19人の日本人選手がプレーする。所属する選手も、MF長谷川唯(28)=マンチェスターC=、MF長野風花(26)=リバプール=ら、現在のなでしこジャパンの主力だらけだ。

ブライトンも南に加えて、MF清家貴子(29)と今夏から加入したMF角田楓佳(20)の3人が在籍。今季は新たに7人の選手がイングランドへの挑戦を決めており、日本女子サッカーにおいての一大勢力となっている。

 なでしこジャパンのセンターバック候補でもDF熊谷紗希(34)=ロンドンシティー=、石川璃音(22)=エバートン=、古賀塔子(19)=トットナム=が、同じリーグでしのぎを削っている。石川、古賀ら若手の突き上げも著しい中、お互いに高め合っていくことを誓った。

 「なでしこでは常に切磋琢磨(せっさたくま)しながらやってこれている。特になでしこのディフェンス陣は仲もいいですし、色々なことを話しながら自分たちで解決していくことも多かった。なでしこのディフェンスは、他の国と比べて体格差や強さで劣ってしまうかもしれない。まずは経験値をより高めながら、とにかくなでしこが勝てるように自分たちの成長を今は測っている段階。ライバルでありながら、いい仲間としてみんなで成長しながら、なでしこが勝つために自分の力を上げていきたいとみんなが思っている。みんなの活躍を見ながら、自分ももっと頑張りたいと常に思っています」

 ◆南 萌華(みなみ・もえか)1998年12月7日、埼玉・吉川市生まれ。26歳。DF。

吉川ホワイトシャークサッカースポーツ少年団でサッカーを始め、中学から浦和レディースの下部組織で育つ。17年にトップチーム昇格し、22年夏にローマ移籍。25年6月からブライトンに加入。代表では14年にU―17女子W杯優勝、18年にU―20女子W杯優勝。W杯は19年、23年に選出。五輪は21年東京大会、24年パリ大会。代表通算62試合5得点。172センチ。

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