大阪府出身の俳優・浜中文一(37)が主演を務める喜劇「大阪は踊る!」が10月4日、大阪松竹座で開幕する(12日まで)。大阪松竹座はジャニーズ事務所(現STARTO ENTERTAINMENT)時代、関西ジュニアとしても長く立ってきた舞台。

「通っていた頃とは街並みも変わっていますけど、この作品で帰ってこられてうれしい。大阪弁の芝居も久しぶりです」と、意欲十分の“がい旋”公演だ。(古田 尚)

 浜中が演じるのは、大阪市役所の雑用処理係「どないしょう課」の職員・前田拓郎だ。ある日突然、道頓堀から石油が湧き、大阪再生プロジェクト「道頓堀油田開発計画」に巻き込まれていく。「とにかく一生懸命な前田拓郎を楽しめるようにつくっていきたいなとは思うんですけど…。市役所からちょっとハブられた側にいる人物がここまで中心になるのは、現実ではなかなか起こり得ないこと。それを面白おかしく、舞台でやれたらいいなと思います」と笑う。

 浜中にとって大阪松竹座は、関西ジュニア時代に毎年、春、夏、冬の3シーズン通い続けた、思い入れたっぷりの場所でもある。好きな場所は風呂だが、思い出深い場所は階段だという。「SUPER EIGHTが出ていた頃ですけど、そこをたまり場にして、次の出番まで座ってみんなで話していた。結構思い出に残ってますね」

 会話に夢中になり、出番に遅れそうになったこともある。「7階から下りていくのに階段が1フロア10段ぐらいあるんですけど、ジャンプして下りました。

だから意外と、出とちる(遅れる)ことはなかったです。骨が折れてもいいからっていう気持ちで、出とちることだけは避けたい(笑)。そういう時って、人間の潜在能力が発揮されるんですよね」。いたずらっぽい笑みで振り返った。

 浜中にとっては、久しぶりに関西弁での芝居となる。普段の会話は関西弁だが、東京を拠点とする生活が長くなり、変化も出てきた。「関西弁の感じは多少薄れているような気がします。なんとか勘を取り戻せたらなと思いますけど」と、稽古期間中にどっぷり関西弁につかり、“正しい”発音と抑揚を取り戻す構えだ。不安も抱えながら、「関西弁でのお芝居ってそこまで多くない。でもしゃべりやすいとは思います」と、楽しみにもしている。

 道頓堀を中心に巻き起こる、大阪人のパワーとエネルギー全開の舞台。「僕が10代でコンサートをやってた時にファンだった人で、今はそんな推し活はしてないけど、久しぶりに見てみようかなみたいな方にも見に来てほしい。

家庭を持って、お子さんがいる方もいらっしゃると思うので。そういう方も『久しぶりにちょっと見てみようかな』みたいな感じになってもらえたらうれしいです」。新旧を問わず、全てのファンの期待に全力で応えるつもりでいる。

 ◆大阪は踊る! 高遠響氏の同名小説を舞台化。「道頓堀に石油が湧いた!?」と、大阪市役所どないしょう課職員の前田拓郎を中心に、道頓堀を舞台に大阪のおばちゃんたちも加勢して、大阪市と府、政府、さらにはアメリカまで巻き込んでの大騒動を描く。やがて大阪一丸となって自衛隊との攻防戦。守るべきは油田か、大阪人の誇りか…。浜中のほか、松本梨香前田耕陽、長江健次らが出演する。

 ◆浜中 文一(はまなか・ぶんいち)1987年10月5日生まれ。37歳。大阪府出身。99年から関西ジュニアとして活動し、17年に卒業して俳優として舞台を中心に活動。

23年にスマイルアップ(旧ジャニーズ事務所)を退社し、フリーとなった。主な出演作に「音楽劇 ザ・オダサク」「犬神家の一族」など。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」にも、朱楽菅江役で出演中。

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